Daisuke

アラジンのDaisukeのレビュー・感想・評価

アラジン(1992年製作の映画)
5.0
[ジーニー最後の願い]

※最後、ネタバレしてます。

誰もが知ってるであろうこの「アラジン」という物語を、私はなぜか今の今まで見るタイミングが無く生きてきてしまった。
もちろんキャラクターとしてのアラジンや青いランプの精「ジーニー」などもどこかで見て知ってはいたけれど、物語までは知ろうとしていなかった。

ある機会があり、このディズニー映画を見る事になった。
そして、あまりに感動してしまい「何故若い頃に見なかったのだろうか」と悔やみながらこれを書いている。

アラジンという若い男は、詐欺や盗みを働く小悪党であり、いつの日かまともな生活を夢見ている。
そして、ある時、王宮を抜け出した王女ジャスミンと出会う。

といった、ロミオとジュリエットのようなベーシックなラブストーリーではあるが、何といってもこの『アラジン』の魅力は
ランプをこすると出てくる「ジーニー」という青き精霊である。
「3つの願いを叶えてやろう」と出てくるその男は、一種の病気としか思えないほどのハイテンションぶりで、これは今見てもビックリするほど激しい動きで見ている自分を揺さぶってくる。

実は私がこのアラジンに深く感動したのはこの「ジーニーの物語」の方である。

このジーニーという男。
劇中ではほとんど語られていないが、どうやら「過去にランプに閉じ込められた」という出来事があったようだ。
そして恐ろしいほど長い時間を彼は1人で主人の願いを叶え続けてきたのだ。
「ランプの中は窮屈だ」
とジーニーは言う。
それを想像した時、私はゾクリとしてしまった。

そして、「3つの願い」
この願いの中には、ジーニーにとって、とても重要な「ひとつの願い」が含まれていて、そもそもそんな願いを誰もするはずがないと諦めている。

何でも叶う願い。
それは、自分のためだけに願われ続けてきた願い。

自分はすごく辛い時、空元気のように笑ったり楽しい事をわざとする時がある。
恥ずかしながら、1人芝居などもしてしまう。

ジーニーが常にハイテンションだったのは、もしかしたらそういった精神状態だったのかもしれない。

一体ジーニーという男は過去になにを犯してしまったのか。
その罪をランプの中で償う事になったのだろうか?
私には、人から奪うだけで何も与えない男への「神からの罰」のように見えていた。

そんなバックストーリーを想像できてしまうからこそ、このアラジンのラストシーンはもう泣けて泣けて仕方がない。
ジーニーはジャスミンという女性を見て、アラジンにこんな台詞を言っていた。

「こんな女性はいない。俺もずいぶん探したんだ。」

と。
この言葉からわかるように、
彼は愛するもの、愛してくれるものを見つける事ができなかったのだ。
そしてずっとランプの中で自由を思い描いていた。

そんなジーニーはおそらく初めて、
最後の願いを「相手のために」叶えようとする。つまり、

「アラジンとジャスミンがうまくいってほしい」

と心で願ったのだ。

そして、神からの罰が解かれたかのように、アラジンという男は本当の自分でいるために、ジーニーの自由を願うのだった。

これは最高すぎてまいった。

最後にジーニーは泣くけれど、
私の方が泣いていたと思う。

なんて美しい物語なんだろうか。

自分がたとえ鎖に繋がれていても、
それでも相手の幸せを願う事が大切なのだと。

そんな物語に見えた。
Daisuke

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