KnightsofOdessa

シルビーの帰郷のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

シルビーの帰郷(1987年製作の映画)
3.5
No.791[スナフキンの帰郷、或いはライヒャルトの原点] 70点

いきなり母親が幼い姉妹を祖母の家に残して朗らかに自殺するという狂気的な作品。母親の死後、その妹で自由人のシルビーが姉妹の世話役として里帰りし、姉妹は奔放な彼女に翻弄されていく。印象的な浸水シーンを経て徐々にボロボロのゴミ屋敷として変貌していく実家を中心に、姉妹はシルビーの背中を見ながら己の進む道を自ら開拓していくことを学んでいく。大人と子供の端境を行き来する姉妹にとって、仕事もせず掃除もせずフラフラとしているシルビーは教師であって反面教師でもあるのだ。同世代の女の子たちに憧れる妹は明るい色の服にスカート、自由なシルビーに憧れる姉はボサボサの髪にジーンズといった風に、彼女たちの対比は非常に分かりやすい。

パシフィック・ノースウェストの田舎町を舞台に、女性の生き辛さを描いた作品であり、場所の雰囲気もテーマもケリー・ライヒャルトと似ている。それも長編ではなく中編『Ode』に。しかし、90年代特有の悲劇性で幕を下ろした同作に比べると、姉妹が自らの意思で別々の道をゆく本作品の"バランス感覚"は所謂"両論併記"だとは思うが、より希望的だ。

それにしても、自由人としてのシルビーのイメージはスナフキンみたいな感じで、少女が真似するには少々早すぎる気もするが、合わないなら合わないでやり直したいとこからやり直せば良いかと思ってみたり。それこそ屋敷に火を付けるように。ラストの線路も印象的。完全に『River of Grass』。同行者がいて、世界から隔絶もされてない、心地よい開放感。
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