まりぃくりすてぃ

WANDA/ワンダのまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

WANDA/ワンダ(1970年製作の映画)
3.4
「夏らしいHAPPYカラーに騙されろ」
(季語/騙されろ→エイプリルフール→春)

このアイスキャンディー系グレーみずいろ(と苦虫顔)に “召しませ攻撃” を強く受け、観てみたら、赤ちゃん泣きわめき&ヒロインの殺風景野外トコトコに始まって、適度にぶっきらぼうでフィルムフィルムしてて、良い感じ。ただし、インディペンデント・イチとまでは褒めれない。1974年の凄すぎる弟『悪魔のいけにえ』の四才上のかなり地味な姉作、ってことを認めてあげられる程度。

さて、ヒロインのワンダはべつだん不機嫌撒き散らす人ではなく、むしろ途中から出てくる悪い男デニスだけがそういうヤツだった。濃さで行くか起伏で行くか、脚本と演出が定めかねてる逃避行ドラマを、キャメラがまあまあ腕よく支えてるのはいいが、デニスの撒き散らす(無愛想を超えてる)不機嫌の土台がまったく見えてこない。なぜ私たちがお金払ってまで彼のマッチョな不機嫌さにつきあいつづけなきゃいけないか、の問いに作品が深みをもって答えていないため、例えば『道』のザンパノなんかと比べて言動に説得力が乏しい。
記号的キャラと呼ぶには彼はワンダを縛りすぎており、ひょっとしたら元々デニスもワンダも(それらを生んだ監督も)みんな薄い人間なのか?という軽視の可能性さえ膨らまさせる。実際はそんなつもりで監督は作ってないだろう。出産を二度まで経ているにもかかわらぬワンダの薄さは、切実なまでに主題そのものだったかもしれないが、デニスまで薄くなってるのは減点物。“バーバラ・ローデンを包む者たちのメタファー” というのは弁解だ。
例えば「これに出てくれたら今年こそアカデミー取れるよ」とか嘘ついてピーター・オトゥールをデニス役にすればどれだけ印象だけでも濃い口になったか(男優・女優間の “反射” も充実したか)とか、そんな弱点があるわけだ。

で、なぜジョンレノン&小野洋子が(おそらく『エルトポ』と同時期に)本作をいたく気に入っちゃってたか。ワンダの声が洋子と似ていて、わるもんデニスも声質と喋り方の(全部じゃないけど)何割かにジョン要素あり、目をつぶって観てれば彼ら二人のかけあいのように聞こえないこともなく、ついでに金髪ワンダの雰囲気が前妻シンシアを連想させやすいから、当時二人にとっての邪魔者だったシンシアを(敢闘賞与えつつ適当に)葬りたい気持ちがこれを気に入らせたのかも。教会コーラスはレボリューション9だったし。

マネキンの場面、好き。