great兄やん

WANDA/ワンダのgreat兄やんのレビュー・感想・評価

WANDA/ワンダ(1970年製作の映画)
3.9
【一言で言うと】
「透明な“居場所”」

[あらすじ]
ペンシルベニア州に住むワンダ・ゴロンスキーは夫に離婚訴訟を起こされ、子供の親権も住む家も失う。仕事もなく、わずかに残った現金も盗まれてしまった彼女は、とあるバーでMr.デニスと名乗る男性と知り合う。彼と一緒にモーテルに泊まった翌朝、ワンダはMr.デニスが強盗犯だと気づくものの、そのまま彼と行動を共にする...。

侘しさと寂しさの美学。社会からのドロップアウトに加え、寄る辺なき女性の“自立”を徹底的に阻害した描写に言わずもがな救いなどないのだが、なぜだかそうは感じさせない“魅力”も伝わってくる。
“侘び寂び”の感性を持ち合わせる日本人だからなのか、それに似た美学を自ずと意識していましたね🤔

ストーリーとしては主人公ワンダが親権も住む家も所持金も無くなり、途方に暮れていた時に出逢った強盗犯と共に逃避行を遂げるロードムービー…ではあるが、とにかくワンダのやる事成す事に申し訳ないがメチャクチャストレスが溜まってしまった😅
確かにあのオツムの弱さは貧困ならではの“起因”だとは思うが、個人的な印象としては“臨機応変のカケラもない女性”としか思えなかった😩...まぁあえてワンダを“最悪”としてしか表現しなかったのは彼女の“意図”でもあるんだろうけど。

それにザラついた映像の質感や煌めきさえも錆びついた雰囲気も、アメリカにおける“社会の闇”を感じさせる静かな“気迫”が伝わってきましたし、ワンダを取り巻く事情に全くもって”希望“のカケラもないのが何よりも生々しい。
失うものがなにも無いからこそ陥る”依存“のループ...やはり自由であっても“虚無”の中で人間は生きれないという残酷な結末が観終わった後でも余韻として強く残りましたね😔...

とにかく流浪の果てに流れ着く“居場所”は存在するのか、その過程を静謐にも動的に映し出したバーバラ・ローデンの才能が光る一本でした。

ハッキリ言って面白味は全く無いのだが、観る者の心を突き動かす“何か”があるのは間違いなく存在する今作。

彼女の行く末に“希望”はない。けれど、“今”を生き延びればそれでいい。

他人に生き方の“良し悪し”を判断されて生きるのではなく、自分自身がいつだって“正解”を判断できる“自由”があるのを忘れてはならない...