むさじー

たそがれ酒場のむさじーのレビュー・感想・評価

たそがれ酒場(1955年製作の映画)
4.2
<大衆酒場を舞台に戦後混乱期の喧騒を描いた人情劇>

作られたのが戦後10年、戦後の混乱、価値観の多様化、戦争の傷跡を引きずる者も貧困もある。
それらいくつものドラマが重なり合って酒場で繰り広げられる内田吐夢異色の人情劇。
舞台は大衆酒場のみで、その開店から閉店まで、そこに集う人々の群像劇となると演劇的シチュエーションだが、居酒屋のセットが舞台のスケールを大きく超えていて、中二階にはステージ、その横には控えの小部屋、飲食フロアにも踊れるくらいの大きなスペースがあって賑わいを更に盛り立てる。
そのセットの各所で、様々な人々のそれぞれのエピソードが描かれ、その変化の度にカメラアングルの移動とかクローズアップとか、映画的な細かな工夫がなされているので、やはり映画ならではの映像になっている。
群像劇でありながら話がバラバラに拡散しないのは、中心に「先生」と呼ばれる梅田(小杉勇)の存在があって、その求心力に依るものという気がする。最後はすべて落ち着くべきところに落ち着いて、夢のようなひとときに幕が下りる。
混乱しそうな群像劇を同時進行で描き分けた脚本(灘千造)の力も評価したい。
※映画のあらすじは『偏愛的映画案内』をご覧ください。https://henaieiga.net