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たそがれ酒場のiceblueのレビュー・感想・評価

たそがれ酒場(1955年製作の映画)
4.8
しみじみと酔いました…。
木炭で描いたような柔らかい色合いのモノクロ人情劇。
歌ありストリップありで繁盛している大衆酒場。
木の階段を上がると板張りの広間があり、奥にはカウンター、中二階にピアノのあるステージ、賑やかに酌み交わす市井の人々。窓の向こうには街の喧騒…。
その立体的な広がりをあらゆる角度からフォーカスしていてそれがまた素晴らしい。
様々な客と給仕する店員の滋味にあふれた人生模様が描かれ、流れるような人の動きに目を瞠る。どさくさに紛れておこぼれをもらうようなちゃっかりした人物もこんな頃にはいたのでしょう。
戦争の名残りや流行り唄が時代を感じさせ、でも現代では失ってしまったものたちがここには残っているような、何とも味わい深い作品。
絵描きの先生の一言一言が胸に優しくしみ込んで、映画の魔法にかかったような余韻。
素晴らしくてため息。
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