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バグダッド・カフェのおーたむのレビュー・感想・評価

バグダッド・カフェ(1987年製作の映画)
4.3
西ドイツ制作の映画で、むかし流行った作品らしいというのを見知って、どんな作品なんだろうと鑑賞。
なるほど、なんだかアメリカ制作っぽくない感じは、けっこう感じます。
でも、不思議と面白かったですね。

アメリカの砂漠の真ん中にあるカフェ&モーテルに訪れた中年ドイツ人女性が、そこに集まり暮らす人々に、少しずつ影響を与えていく話。
何も起こらないと聞いてましたが、別にそんなことはなく、コミュニケーションによる変化が次々に起きてます。
事件が起きてないだけですね。
まあ、前半は、カフェの女主人の常軌を逸したヒステリーぶりに辟易させられますし、どうやら主役らしい太ったおばさんが画面に映るたび、何を見せられてるんだろうという気にもなります。
しかし、作品の本領が発揮されてくる中盤以降は、笑えるし、幸福感も味わえる、いい時間を過ごせました。

普段見慣れているアメリカ産や日本産の作品とは微妙に違うユーモアや、匂わせておいて回収はせず放置される伏線などからは、独特の味わいを感じます。
また、都会の喧騒とは無縁の浮世離れした舞台や、とりどりの人たちが一ヶ所に集まるごった煮感が、作品を現実から解き放ち、夢を見ているような心地にさせてくれます。
魔法やモンスターは登場しませんが、本作は、とってもファンタジー。
見る側を浸らせてくれるという点で、映画の魔法を備えた作品だと思いました。
いい映画です。

現実と地続きなファンタジーということで思い出しましたが、たとえば「かもめ食堂」なんかは、同じような手ざわりを感じさせる作品だったような。
あの作品が好きな人なら、本作も楽しめそうかなと、ふと思いました。
ちなみに、私は「かもめ食堂」が大好きだし、本作も楽しかったです。
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