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橋の上の娘のLATESHOWのレビュー・感想・評価

橋の上の娘(1999年製作の映画)
3.5
ストイックなモノクロ映像が
破滅的な男女の官能美を際立たせたのは何故だろう。

投身自殺寸前だったヴァネッサ・パラディとスネに傷持つナイフ投げ名人のダニエル・オートゥイユ。
すきっ歯瘦せぎす尻軽少女と眼光鋭い鷲鼻中年という色気のない二人は
ヌードもベッドシーンもキスひとつない
ナイフ投げとその的というスリリングな関係で結ばれている。
巡業先で洗練されていくヴァネッサの艶やかな見返り美人図、
恋人同士ではない命を預けるパートナーとしての信頼関係、
カジノでの運試し、
あけすけなセックスより生きてる実感が強い、運命の車輪のように回転するナイフ投げの的。
モノクロに写る白い肌のかすり傷、漏れる吐息。
大胆で濃厚な描写じゃなくても
セックスひとつなくても
恍惚の表情は撮れるのだと
パトリス・ルコントは証明する。
ナイフに隠喩を密やかに込め、
大人のファンタジーを品を損なわずに魅せてくれる。
愛の囁きも交歓もいらないけど
互いを必要とする引力が
橋の上で始まり終わる。
彼岸と此岸の真ん中で。
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