Jeffrey

人間の約束のJeffreyのレビュー・感想・評価

人間の約束(1986年製作の映画)
3.0
‪「人間の約束」‬
‪冒頭、都内の新興住宅地。死亡した老母。葬式、参列、警察の捜査。絞殺したと自首する夫。取調室で失禁、雨の夜、夫婦の絆、出棺、今家族の絆を見詰める…本作は吉田喜重が前作の戒厳令以来十三年ぶりの劇映画でカンヌに出品もされた三國連太郎主演のドラマで最近でも多く扱われる題材“尊厳死”をテーマにしている分、映画慣れしてない方でも十分に感動する事だろう。だが、今迄の吉田喜重に見られた前衛かつ非現実的要素を含む斬新なカメラワークもカット、アングル、構図が無く、あの六十年代から七十年後半の作風を好む私にとっては“ガッカリ”である。まず、本作の原作「老熟家族」を一読した監督は映画化を進めたのだが、まずこのテーマは彼以外でも十分に描ける作家は日本にはわんさかいる。だが、戒厳令以降に似た様な映像を撮り続けても飽きられるし、敢えて原点に戻ったのかも知れない…そこは推測だし、分からない。でも本作が全く低評価ではない…当たり前だが。まず一見老夫婦の死の悲しいドラマ仕立てに見えるが、冒頭からパトカー、刑事が自宅に上がり込み、調査してるシーンはサスペンスの要素が多少なりともある。これは結局、嵐が丘を超えて最後の劇映画 鏡の女たちにも通づるものがあるのは、彼の作品を観た人にはわかると思う。物語は三世代が同居する家庭を通して夫婦の愛と親子の絆を見詰めるのだが、この死にたいと懇願する老親を抱える家族の気持ちがどんなものかを考えると、さぞ大変なんだろうと思うも、まだ自分の家族がこの様な環境が起きてない分、正直心の底からの辛さ、激務は分からない。後に味わうであろう、と言うか誰しも経験する物語なのだが、本作に尊属殺人も描かれてる分、本作の様な現実が絶対とは言えない…。‬余談だが、劇中でテレビからアン・ルイスの六本木心中が流れてきて、あ〜この時代の曲かぁと懐かしさを感じた。よく“あ>無情”と聴いてた曲だ。‬ ‪三國の芝居には圧巻だ。この様な芝居は後の伊丹十三の大病人でも見せていた。良作だ…‬
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