荒野の狼

怪獣島の決戦 ゴジラの息子の荒野の狼のレビュー・感想・評価

4.0
1967年12月に公開のゴジラシリーズ第8作で86分のカラー作品。本作の一番の魅力はタイトルにあるゴジラの息子ことミニラ(作品中ではミニラも「ゴジラ」と呼ばれている)。ミニラがカマキリの怪獣であるカマキラスと対決するする前半は魅力だが、後半はクモの怪獣グモンガの造形が普通のクモとかわりなく武器もクモの糸のみであり、退屈な展開。ミニラとゴジラの関係はユーモアと愛情も感じられるものであり、ゴジラ本来の対象観客である子供たちが家族と楽しめるシーンであり好感が持てる。
特撮ヒーローファンに嬉しいのは、冒頭にパイロット役でウルトラマンのハヤタ隊員の黒部進が登場、島の研究チームにはウルトラQのレギュラーの二人佐原健二と西條康彦が出演していること。本作はウルトラマン(1966-67年)とウルトラQ(1966年)のTVシリーズ終了の直後であり、ウルトラシリーズの主役とゴジラの共演ということになる(ちなみにゴジラの着ぐるみはウルトラマンでは怪獣ジラースとして、ウルトラQでは怪獣ゴメスとして登場している)。
高島忠夫が率いる天候を変える研究も、島の温度を70度にしたり、それとは逆に雪を降らせたりと、環境破壊ということに注意を払っていない。この時代の低い意識のあらわれともいえるが、島の温度を上げることで島の住民の前田美波里が死亡する可能性を知りながら顧慮しておらず、さらに、この実験の結果でカマキラスが巨大化するという影響がでているのにも関わらず、映画の後半でさらに危険な実験を繰り返しているのは、映画の中の世界としても許されない判断。爬虫類のゴジラ親子が雪に埋もれてしまうのを「冬眠するから大丈夫」などと都合のよい解釈をして、前田美波里の命の恩人とも言えるミニラを親子共々凍死の危機に追いやる身勝手な人間という解釈もできる。
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