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ブルベイカーの一人旅のレビュー・感想・評価

ブルベイカー(1980年製作の映画)
4.0
スチュアート・ローゼンバーグ監督作。

囚人による自治で運営されるウェイクフィールド刑務所の新任所長・ブルベイカーが、刑務所の腐敗を改革するため奮闘する姿を描いたドラマ。
観始めてしばらくは違和感をなかなか拭い去れない。囚人によって運営される刑務所が舞台なのだが、囚人の自由度が高すぎてちょっと不自然。勝手に小屋に住んで女を連れ込む囚人がいたり、ブルベイカーが自室に招いた囚人は手に銃を持っている。最も衝撃的だったのは、刑務所で催されるイベントに招かれた一般人を上からライフルを構えた囚人が常に監視していること。いくら囚人の自治が確立されているとはいえ、囚人の射程圏内に一般人を晒すなんてリスキー過ぎる。しかも囚人の多くは軽微な罪で服役しているわけではなく、殺人犯も普通に存在する。
とまあ、設定的に結構無理のある刑務所を舞台にしてはいるが、基本的なテーマは“人間らしく生きることの尊さ”だ。
賄賂や暴力が常態化し、一部の“役付き囚人”が圧倒的多数のその他囚人を恐怖で支配する状況を打破するためブルベイカーは果敢に立ち上がる。腐敗が刑務所内に留まっていないことがミソで、囚人を奴隷的に酷使する外部の民間企業経営者がいたり、政治的な思惑や金銭的利害関係が働いて刑務所の内と外からブルベイカーに圧力がかかる。そうした中で、ブルベイカーは人間以下の扱いを受ける多数の囚人を救い出すため孤軍奮闘する。
個人的利益を最優先する一部の囚人と彼らと癒着状態にある外部の人間の腐敗し切った関係に切り込んでいくブルベイカーの姿がかっこよく、彼の正義と信念が硬直的だった囚人の考え方を次第に変えていく様が感動的。そして終盤、唯一の理解者らしき女にブルベイカーが言い放ったある言葉が痛烈で爽快で、刑務所内外の実態の全てを見抜いていたブルベイカーの毅然とした態度に惚れ惚れする。あんな言葉、一生に一回でいいから言ってみたい。言ってやりたい。
そして、主人公ブルベイカーを演じたロバート・レッドフォードは完璧なハマり役。泥臭さとスマートさを兼ね備え、あくまで自身の正義を貫き通す不屈の姿勢が最高にかっこよくて清々しい。
また、広く世間に名が知られる前のモーガン・フリーマンが狂人役で出演しているのも貴重な見どころだ。若い頃(と言っても43歳前後)のモーガン・フリーマンの御姿はとても新鮮で、歳を取ってからのイメージとはだいぶ違いがある(トレードマークの顔のシミもほとんどない!)。出演時間自体は短いが、その存在感は流石だ。
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