みおこし

ヤバい経済学のみおこしのレビュー・感想・評価

ヤバい経済学(2010年製作の映画)
3.5
モーガン・スパーロックの手がけるドキュメンタリーがいつも本当に面白いので、フィルモグラフィーを遡って別の作品を観てみることに。
『ヤバい経済学』というベストセラー本の映画化ということで、スパーロック監督以外にも原作者やプロデューサーの名前がたくさんありました。どこまでスパーロックは関わったんだろう?

いくつかのセクションに分けて、アメリカの社会を所得、地位、職種などの視点から切り開き、時には文化的差異や人種問題にもスポットライトを当ててゆく。大学入試の時にひたすら読んだ現代文の問題を読んでる気分...。もちろん図解や映像があるので、経済学への苦手意識が強い私でも理解できるわかりやすさでした!すごい!!(笑)
無知な私が観ると、「なるほどな〜」と唸る解釈や視点がたくさんあって、今後アメリカ社会に触れる際のいい勉強になりました。
特に興味深かったテーマは、経済格差と名前の問題。言われてみれば、公民権運動以来、黒人と白人の名前が著しく分離してきていて「〜らしい」名前を付ける親たちが増えている。ジャマールは黒人っぽい?アシュリーは白人っぽい?エミリーと名付けられた子は利発な娘に育ち、ブリトニーやシンディーと名付けると水商売に育つ??ちょっと過激な内容だったけれど、名前1つで生まれる偏見や差別の問題は、人種のサラダボウルであるアメリカだからこそ色濃いのだなぁとショックを受けました。
また、高校1年生の男の子2人に、「お金をあげるから成績上げて!」と頼む実験もなかなか興味深かった。その前のテーマでも言われていたけれど、確固たるインセンティブ(やる気やモチベーション、動力源のようなもの)があると、人は何か目標に向かって進んだり、事をうまく運ぶ傾向になるらしい。インセンティブの有無によって、成功の質も変わってきたりするんだって。当たり前のようで、実際に色んな例を使ってインセンティブとは?と探る中で、見えてくるものもあって面白かったです。

...と、かなり楽しめたんですが、結果として何が言いたかったのかはイマイチ掴めず。本の中のテーマをあまりに多く取り上げ過ぎていて、ちょっと解釈に時間が掛かる作品でした。それでもここまで色んな考察を私たちに分かりやすく教えてくれる良心的なドキュメンタリーは珍しい。さすがスパーロック!
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