カトキチ

牝犬のカトキチのレビュー・感想・評価

牝犬(1931年製作の映画)
5.0
ある女に恋した中年の画家がその女の背後にいたヒモの指示によってまんまと騙され、金も仕事も絵も失う話……ってどっかで観たなと思ったら、フリッツ・ラングの『スカーレット・ストリート』の原作だったというオチ。ノワールというよりは神的な視点で「人間っていろんな愚かさがあって滑稽よね」という感じで描かれる。

枠をすり抜けて奥に進んでいくというカメラワークが目立ち、壁を隔てたふたつの空間を横にすり抜けたり、とてつもなく陰惨な殺人をあえて陽気な映像と組み合わせて表現したり、85年も前の作品なのにはっとさせられることもしばしば。

特に主人公が「オレは自由だー!」と叫んだときどしゃ降りの雨が降ってるというのは全然「自由だー!」感がなく、明らかに悲劇に向かっていくのがよくわかるのだが、これと同じ演出なのに『ショーシャンクの空に』だとまったく真逆の感情になるから映画というのはおもしろい。
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