Melko

ショー・ミー・ラヴのMelkoのネタバレレビュー・内容・結末

ショー・ミー・ラヴ(1998年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

「女は機械のこととかに疎い。化粧や服、着飾ることばかり」
「ヨハン、あんたの意見は?」

「25年先なんてどうでもいい。わたしは今幸せになりたい。」

「どうする?」
「ドアを開けて出ていくの。堂々と。」

うあぁあ〜。
なるほど、これは、、見事だわ…!!
スウェーデン発の百合物語。
ただとてつもなくビター。

仲間内で酒飲んでイキがる、頭痛薬飲んでハイになろうとする、小説、グランジ、リスカ、色恋、同性愛。

ただでさえ、田舎町、おまけに中学校という狭すぎる人間関係。

LGBTQのうち、レズビアンというかどちらかというとQueerなのでは?と感じたアグネス。学校では友達が1人もいない。物静かで頭がいいけど時々感情に任せて人殴っちゃったりする。何やっても空回り、色々こじらせまくり。ビアンであることがバレて、学校ではハード目のイジリに合う(世の中ではそれをイジメという)。小説家になるのが夢。
そんなアグネスが恋する、派手な女の子エリン。退屈な田舎町を早く出て行きたい。田舎町で、若くで結婚して子供産んで年取るなんて嫌。見た目が派手で言動が粗暴なため、まだバージンなのに「あいつは男なら誰でも構わない」と、あらぬ噂を流される。モデルか心理学者になるのが夢。そんなエリンは最初アグネスをからかいキスするが、アグネスに惹かれていく。自分がレズなんて。人と違うことは刺激的。面白い。
でも周りからは馬鹿にされる。今まで通りではいられなくなる。だからアグネスを避けまくるんだけど気になる。彼女もまたQueer。

アグネスの性格と挙動が学生時代の自分に被ってしまってめちゃくちゃ居た堪れなかったし、見ててすごく辛かった。
エリンに心を開いたのに、そのエリンに突き放され、ズタズタになる心。ただでさえ友達ゼロなのに、見知らぬ同級生からイジられ、ロッカーには女の裸の写真。
アグネスがかわいそうすぎて、自分の保身のために好きでもない男と付き合って処女をあげちゃうおバカなエリンにとてもイライラしてしまったけど、何かと移り気な彼女が、ある事柄に対して一貫してちゃんと自分の意見を持っていたことにはホッとした。それは、「女性であること」
女だから〇〇できないとか、〇〇が苦手とか、そんなこと言うな、と。何がわかるんだ、と。
そうだね、それは確かにそうだね、と。
嫌いじゃないからっていう理由で、女を馬鹿にしてカッコつけてばかりのアホ彼氏と付き合い続ける姉よりも、幾分かマシだと思うよ。
「みんなと同じは嫌、普通は嫌」としきりに言ってたエリンが、意識しあうアグネスを周りの目を気にして避けまくることで、周りのその他大勢と同じになってるのがなんとも皮肉。

痛々しさと幾度ものすれ違いの果てに。
エリンに裏切られてばかりで空虚なアグネスに、QueerからLesbianだと自覚したエリンが学校のトイレで話があると。お互い好き同士だと認識できた彼女たちに、「エリンがトイレに男を連れ込んでる」と同級生たちが囃し立てドアを叩く。
どうする??
答えは。
「私の新しい彼女よ」
笑顔で手を繋いで出ていく2人。欲を言うなら、このシーンで思い切りカッコよく終わっても良かったのでは、と思ったけど、ちゃんと最初のエリンのシーンと繋がってたから、まぁ、いいか。予想外に子どもらしくて微笑ましいラストシーン。

ビアンは気性が激しくすぐ別れるという噂を聞く。アグネスとエリンには、どうか、お互いの夢を応援し合ういい関係でずっといてほしいと願う。

クールなお顔立ちなのに泣いてばかり、ほとんど笑わず苦悩してばかりのアグネスが愛おしい。
お胸がブリンブリンだけど、そこはかとなくお顔に品のないエリンもダサかわいい。
この作品は、主役2人の表情の機微を楽しむべし。特にアグネスの諦めや怒り、苦悩の表情は凄まじい。

アグネスに邪険にされたからといって、同じように邪険に仕返した車椅子のあの子。
それでは人生楽しくないし、いい未来は待ってない。アグネスを引き合いにだして人の気を惹こうとするも、誰も相手にしてくれない。

買ってもいない宝くじの抽選番組を、ぼーっと眺める人生は、嫌だ。
Melko

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