茜

シリアル・ママの茜のレビュー・感想・評価

シリアル・ママ(1994年製作の映画)
4.5
ふざけた輩に鉄槌!!!
最初は快楽殺人鬼なママを想像していたんですが、ちょっと違った。
家族思いが故そして常識人であるが故の殺人とでも言うべきか…。
正直なところ自分はこのママにめちゃくちゃシンパシー感じちゃいました。

私もくっちゃくっちゃガム噛んでる人が苦手だし、ゴミの分別という超簡単なルールすら守れない人間を見ると不快感MAXになる。
駐車場で横入りされたら腹立つし、ホラー映画大好きな息子に対して「精神病院に行った方がいい」なんて言われたらそりゃブチギレる。
(彼氏に捨てられた娘については新カノがトレイシー・ローズで、こりゃしゃーないと思ってしまったけども…)
そんな理不尽で横暴な輩に対して、ママが怒りの鉄槌を振り下ろす。

勿論、映画の中だからこそ許される行為ではあるのだが、誰しも一度や二度もしくは毎日のように、非常識な人間に対して腹を立てた経験があるはず。
そんな行き場のない怒りを代弁して発散してくれるかのようなママの姿には正直スカッとしたし、結果的にママが社会の支持を集めるという展開も意外と違和感なく思えた。
ただ「己の正義を振りかざす」という視点で考えると非常に危険で、そういう意味では社会風刺的なお話とも捉えられる。

過激な内容ではあるものの映画自体はコメディタッチで、ジョン・ウォーターズらしい下品な小ネタも満載。
突き刺した相手の臓物で滑ってすってんころりんと、アニーの「トゥモロー♪トゥモロー♪」をBGMに固い肉で殴り殺されるおばさん大好き。
ママが殺したい奴を追いかけてライブハウスに乱入しちゃうシーンも大変賑やかで、こんな内容なのに作風はポップに仕上げてくるセンスが本当に独特な監督だ…。

ただラストにママが犯した殺人の動機がかなり理不尽で、もうこの人はもう完全に歯止めが効かなくなっているんだなぁ…。
ここに最大の恐怖と「正義の暴走」という皮肉が込められてるように感じて、最後にチクリと針を刺されたような気分になりました。
茜