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転校生のYOUのレビュー・感想・評価

転校生(1982年製作の映画)
4.1
大林宣彦が監督を務めた、1982年公開の青春ファンタジー。
山中恒の児童文学『おれがあいつであいつがおれで』を原作とする本作は、『時をかける少女』『さびしんぼう』と並ぶ”尾道三部作”の第1作。自分のような若い世代にとっては、”男女入れ替わり”と言えば新海誠監督の『君の名は。』、”タイムリープ”と言えば細田守監督版『時をかける少女』となるので、後追い的にそれらのルーツを遡っていくのは実に興味深い体験です。またそれは同時に「映画作家・大林宣彦を遡る」ことにも繋がるので、『HOUSE/ハウス』『時をかける少女』から観始め”戦争三部作”で完全にノックアウトされた自分にとって「未見の大林作品が山ほどある」というのはある意味もの凄く幸せなことなのだと近頃思い始めておりまして、本作はまさにそれを確信させてくれるような作品でしたね。まず本作はストーリーや全体の語り口からして、尾道三部作ひいては大林作品全体でも”かなり観やすい一作”だとは言えると思います(戦争三部作を続けて観たせいで感性が麻痺したのかと思った…)。「思春期の男女の身体が入れ替わってしまう」という物語のキャッチーさはもちろんのこと、毎度お馴染みクセの強すぎる特異な演出が本作においては”適度に抑制されている”為、大林作品にその都度感じる困惑や奇天烈さもほとんどありません。その分劇中では主演2人の演技の鮮度や初々しさが存分に活かされていますし、特に斉藤一美を演じた小林聡美さんの演技と佇まいは本当に見事です。この物語が持つ可笑しさや愛らしさ、危うさなどを彼女は見事に体現されていますし、こうして新人からプロに至るまで役者を総じて”大林作品のキャラクター”へと劇的に変貌させてしまう演出は彼の監督作全てに共通する重要な構成要素だと思います。

「身体が入れ替わってしまった男女2人が互いの価値観やパーソナリティを文字通り”身を持って理解する”ことで自己を形成し大人へと成長していく」という物語には世代やジェンダーを問わず共感出来る普遍的なテーマが内包されていますし、そのテーマは『君の名は。』に比べよりクリアかつ直線的に受け取れた印象です。自分は『君の名は。』をまさに思春期真っ只中である高校2年生の頃に劇場で鑑賞しましたし、あの作品を「主人公達と同じ高校生の頃に観ることが出来た」のは今でも大変喜ばしい体験だったと思っています。そして今回そのルーツとなる本作を観たことで、「青春学園モノ」というジャンルがいつの時代も作られ続けている意味までをも改めて実感することが出来ました。作品評価云々関係なく、思春期の頃に観た映画ってそれが案外”心の一本”になってたりもするんですよね。更にそれが自分の年齢や立場に近かったりすると、そりゃ大ヒットしたりカルト的人気を誇るのも大いに納得出来ますよ。自分は『転校生』『君の名は。』に続く次世代の男女入れ替わりモノも是非観てみたいですし、原作小説や2007年のセルフリメイク版も参照してみたくなりました。



















































































































最近になってリー・アイザック・チョンもまた監督を降板してしまった実写版『君の名は。』、一体どうなっちゃうんでしょうね。
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