ちろる

私の中のあなたのちろるのレビュー・感想・評価

私の中のあなた(2009年製作の映画)
4.2
非常に難しく思いテーマ。

「命」とは
「生きる」とは
「生の尊厳」とは

様々な側面と立場で考えたときに、私自身その状況と立場によって意見は変わってくるはずなので、きっとだれもこれらについて明言はできないはずだ。

物語は白血病のケイト、そしてそのケイトのドナー提供の為に生まれた妹のアナ、そしてキャメロンディアス演じる母親を軸に描かれる。

つらいのは問題を直視さえしなければかれらがものすごく愛に溢れたステキな家族であるということ。

しかし母は娘を助けたい一心で、ケイトへ一心に愛を注ぐ。

夫も妻のその思いを受け止め、見守りつつ平等な愛を家族に注ぎ、両親の愛が姉に偏っていながらも、姉を励まし愛し続ける妹と弟。


そもそもドナーになる為に出産するということ自体、大々的に認められているのかという驚きがあった。
物心がつき、「あなたは病気のケイトに骨髄を提供するために生まれてきたのよ。」と伝えられた時のアナの気持ちはどんなものだったのだろう。

大好きな姉を助けることができるのは私しかいない。という思いと同じくらい、自分は他の子供と違い両親の愛の結晶として生を受けたわけではないということを感じながら生きることのつらさは計り知れない。

それでも毎日抗がん剤で髪の毛の抜けた姿で病院のベッドで闘病を続ける大好きな姉を見守る日々はどんなだったのだろう。

周りが見えなくなるくらい必死に娘を助けたいと思う母親の方も、一見とても勝手で周りが見えない人間のようにみえるけれど、キャメロン演じるこの母親の姿はけっしていやな感じはしない。

妹のアナをドナー提供の為に作るなんて人間の生を冒涜した行為だということなんて、弁護士だった彼女なら一番分かっているはずだ。
守りたいものの命のともし火が消えそうな時、倫理とか道徳とか、周りの目とかそういったものを無視してでも突き抜けたい気持ちが痛いほど伝わった。

弁護士としてのキャリアも捨て、ただ娘の病に対して闘い、走り続けてきた彼女はもう立ち止まることが出来なかった。
人は闘い続けてきたものをいきなり失ってしまうと抜け殻になってしまう。

彼女のようにキャリアを捨ててすべて注いできたらなおさらだ。
長い闘いが終わった彼女の悲しみにも涙が止まらなかった。
「延命」とは家族のエゴなのか愛なのか。


この映画のなかで一番好きなのは、父親が、子供たちを海に連れ出すシーン。

ケイトへのリスクを最小限にしたい母と、生きているうちに幸せな思いを出来るだけさせたい父親の思いがぶつかる。
はげしいシーンだけどもそこに共通してあるのは「子供への愛」。

あきらめて海辺に座る母と、遊びまわる子供たちと、心から幸せそうに笑うケイト。

このそれぞれの温かさと、みんなの愛がこの重いテーマの映画をやさしく包み込んでくれているんだと実感した。
ちろる

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