愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像の作品情報・感想・評価

「愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像」に投稿された感想・評価

すごい見応え!不快、だけど圧倒された。けど絶対に人に勧められない!
画家フランシス・ベイコンとその若き愛人でミューズのジョージとの出会いから別離までを、まるでベイコンの精神世界・作品世界を映像でたどったかのように描く。すんごい疲れる、けどベイコンの人格と世界観だわ、間違いなく。
ベイコンは傲慢で極めて底意地が悪すぎる。あちこちジョージを連れ回し、はねのけ、ほかの男と浮気する。大事にしないのに、それでも離さない。さながらDV野郎(ハネムーン期はない)。ジョージの精神が蝕まれていく様子が悲しいくらい伝わってくる。酒に走り、ドラッグに走り。友達がベイコンみたいな男に引っかかったことがあったけど(複数名)、絶対に別れないんだよな、優しい時もあるの、って。
愛の悪魔は自分自身だ。自分だけが特別と思い込み、不安にかられ、身も心も焼き尽くしてしまう。観ていてとても痛かった。
もう二度と観たくない。
悪魔なんて、誰でも見る。
現実の方が恐ろしい。
mtmt

mtmtの感想・評価

3.5
歪んだ人間の具象像が特徴のイギリス人画家、フランシス・ベーコンが主人公。監督は自身が画家でもあるジョン・メイブリー。音楽は坂本龍一。画家の人生や作品はほとんど描かれず、いわゆる伝記映画ではない。内容は傲慢/皮肉屋ベーコンと若きダニエル・クレイグ演じる不安定な恋人との生活とその破滅。総じて不穏/不快な印象。
フランシス・ベーコンの作品世界になぞるように、彼と彼の恋人(ダニエル・クレイグ)の内面世界が具象化され、それに合わせてベーコンのポエティックなモノローグ(たぶん「肉塊の孤独」からの抜粋)が綴られるのだが、これが悪魔的に退屈の極み。凡才が天才を描くのに一番やってはいけないことのオンパレード。鏡や窓をこんなにも凡庸に使う監督がいることに驚くし、心理描写で魚眼レンズを使う厚顔ぶりには恐れいった。アトリエの生々しさもコロニールームの猥雑さも全くない。自分の顔に絵の具を塗りたるシーンがあり、面白くなるのかと思ったら、また退屈な心理描写。1時間4分ぐらいにダニエル・クレイグのファンなら狂喜乱舞するような「ブツ」が見れるのだけど、私は特段ファンでもなかったので、あの「ブツ」のように「ぐったり」しながらボンヤリ観ていた。デレク・ジャーマンが師匠らしく、よく知らないけどPVも何本も監督してるとのこと。まあそんな感じ。
全く似てないデビット・ホックニーが出てきてベーコンが彼を「作品同様、退屈なやつだ」とコケにするシーンがあるが、ホックニーの作品は、この作品ほど退屈ではない。
ただ、冒頭のダニエル・グレイグが他人の家に泥棒に入る格好がどう見ても「ハードゲイ」だったことと、ベーコンの泊まってるホテルにあるテレビが「三面」なのは笑った(あんなテレビあったのな)。 あと坂本龍一のスコアは個人的にはあんま好きじゃない。
sssssss

sssssssの感想・評価

3.1
ベイコン役似てるしハマってる。描写が濃厚でヘヴィー、ベイコンの世界観通りの狂気とキモさはしっかり伝記
なつこ

なつこの感想・評価

3.2
フランシスベーコンは全然知らない 曽我部恵一の曲でしか知らない 映画に助けられています..
人間の孤独や恐怖を描く作風で知られる20世紀の具象画家フランシス・ベイコンと,その3番目の恋人ジョージの狂気の愛。アップリンクも製作に携わっているアート系同性愛映画です。
ベイコン自身が『戦艦ポチョムキン』などの映像イメージにインスピレーションを得た現代人で,この個性的な芸術家を映像的に描くことにまるで違和感がなかった。ベイコンの大ファンだという坂本龍一の音楽も含めて魅力的。ぜひ『肉への慈悲』も読んでみたい。
屈折した芸術家の愛の形ってああいう感じなのね。なんてったって「歪んだ肖像」だもんねそうだよね。画家として絶頂に達したベイコンと,好奇の目に晒されて潰れてしまったジョージの対比が哀しい。
画家フランシス・ベイコンとジョージ・ダイアの出会いと別れを軸に、同性愛と作品制作の苦悩が描かれる。得体の知れない生々しさや不安感が散りばめられた室内風景、色調やイメージ群の数々は、ベイコン作品から受ける暴力性や造形美に肉薄していて、思っていたよりも好感触だった。
ベイコンを演じたデレク・ジャコビが本人にそっくりでまったく違和感がなく、ジョージ役の若かりしダニエル・クレイグの初心い感じも良かった。

何よりも楽しかったのはベイコンのアトリエの再現度。壁やドアに絵の具が暴れまわり、絶妙に薄暗い光や画材の山。あの空間がすでにベイコンの作品。そのほか、歪んだガラス越しの景色、暗闇の中の箱の空間、椅子や照明、壁、悲鳴の顔、ベッドとグリーンのシーツ、酒場に集うアクの強い面々、海鮮アップの下品な食卓会話シーンなどなど見所多し。ティルダ・スウィントンの顔もさり気なく。

エドワード・マイブリッジの連続写真の影響もあるベイコンの絵画は、映像との親和性も高いように思われる。特にトリプティクスと呼ばれる三枚で一つの作品を成すシリーズはコマ割りのようでもあり、カメラアングルのようだ。また悲鳴をあげる顔や、歪んだ表情の根幹にはベイコンが画家になる前に感銘を受けたという映画『戦艦ポチョムキン』の有名なスチール写真にあることからも、やはり映像については深い思いがあったのだろうと伺える。
トリプティクスは劇中の三面鏡として、額縁は絵画作品の構造を映画内に取り込んで、デヴィッド・リンチに連なる映像表現も垣間見える。因みにリンチは映画作家の前に画家を志していたのだが、ベイコンの作品に出会って以降は画家の道をやめ、映画の世界に進むきっかけになっている。

数年前、ベイコンの回顧展で憧れの絵の前に立った。過去に足を運んだどの展覧会よりもインパクトは強く、濃密で、とても強烈な体験。苦痛、悲鳴、フォルムの記憶が鮮烈に刺さったままだ。
鑑賞者と絵画の距離を取るために分厚いガラスの額縁に収めているという注釈も、彼なりの外部との関わり方を感じる。

ベイコンの貴重な言葉として『肉への慈悲』という本があり、これはしばらく絶版になっていたのだが昨年文庫化されたので、そちらもオススメ。

──歪めて描くことについて、姿かたちを深く傷つけることなく立ち現れた真の姿を記録できた人がいるでしょうか────
〈肉への慈悲〉より
S

Sの感想・評価

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フランシス・ベイコンの描く愛人の虚空は、彼と愛人の間に割って入る孤独なのかもしれない。
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