こたつむり

ライフ・オブ・デビッド・ゲイルのこたつむりのレビュー・感想・評価

3.0
死刑制度反対の急先鋒である大学教授《デビッド・ゲイル》が殺人容疑で捕まった。はたして、彼は本当に殺人者なのか、それとも冤罪なのか。死刑執行間近で真相を探るサスペンス!

…というわけで。
死刑制度の是非を問う作品でした…が、元々「死刑制度反対」と考えている人に向けた映画…だと思います。だから「賛成」派には…届かないんじゃないですかね。

と言うのも。
何故、死刑制度に反対するのか。
という点が曖昧なのですね。物語全体で描いているのは“冤罪”についてであり、それを死刑制度に結びつけるのは性急過ぎると思うのです。

なにしろ、“冤罪”は裁判が有する構造の問題。
「冤罪の者が死刑になる可能性」に言及するならば、逆に言うと「冤罪じゃなければ死刑で良い」ということになりますからね。やはり、この問題は切り離して考えるべき、だと僕は思うのです。

だから、劇中で。
「死刑制度を止めた州の犯罪率が下がった」という台詞があるのですが、それを理屈として繋げるわけでもなく。印象を操作するためだけに終わるのです。もしも、本作が死刑制度の是非に訴えかけたいのならば、感情ではなく理屈で攻めるべきなのです。

また、本作の監督さんはアラン・パーカー。
サスペンス映画の盛り上げ方を熟知されている方です。ですから、テンポは良いし、登場人物たちを十二分に活かす技術を存分に披露しています。タイトルが示すとおり、デビッド・ゲイルの人生(の一部分)は巧みに描き切っていました。

だから、皮肉なことに。
「死刑制度反対」というお題目が、サスペンスを盛り上げる一要素に成り下がってしまったのです。

また、主人公を演じるのが。
ケイト・ウィンスレットというのも逆効果…だった気がします。“キレモノだけど唯我独尊”という雑誌記者を演じるには“湿度が高い”のですね。それに《デビッド・ゲイル》を演じたのがケヴィン・スペイシーというのも…真正面過ぎたと思います。

まあ、そんなわけで。
死刑制度の是非を問う作品ではなく。
サスペンス映画として鑑賞すべき作品。
ただ「死刑制度反対」寄りでないと、スムーズに楽しめないかもしれません。ちなみに僕のスタンスは「死刑制度自体は反対だけど、現実を考えたら止むを得ない」です。
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