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書を捨てよ町へ出ようのryosukeのレビュー・感想・評価

書を捨てよ町へ出よう(1971年製作の映画)
3.8
フィルターによる着色、強烈な明暗の変更、動き回るカメラによる良い意味でアマチュア感のある実験的な映像が連続する。
思春期の性欲、やり場のない怒り、家族関係での葛藤が描かれる。
まあ実験映像の羅列という感じもして、訛りの強く録音状態の悪いセリフも相まって若干退屈してしまうシーンもあるが、エネルギーは物凄い。
やはり冒頭はインパクト大。思いついてもやらないようなことをやってしまう。役者が口ごもったりしても、そのカットがそのまま使われる。
風俗でのシーンは、変化する明暗、音楽とお経と泣き声のオーバーラップによる音声、多重露光によって複雑で多層的なイメージを作り出し、印象的なものになっている。
終盤、ロック調の劇伴と共に叩き込まれる燃える飛行機のショットが強烈。
エンドロールも人物の顔を横移動で延々映していく斬新なものとなっている。
最初と最後はメタ的な演出。劇場の明かりを付けさせてしまうというのは凄い。第四の壁の破り方としてはかなり徹底的なものではないだろうか。
ラストの独白では、上記の演出も相まって、映画館の暗闇に映し出されている間しか存在できない映画というものの儚さに感慨深い気分にさせられる。
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