純

早春の純のレビュー・感想・評価

早春(1970年製作の映画)
4.3
早すぎる春の憂鬱と狂気は、一瞬の美しさのために深く深く心をえぐっていくのかな。絶望はこんなにも生々しく美しいと、清らかな水の中で漂う若さは歌う。求められることじゃなく手に入れることだけを追い続ける瞳は、なんて向こう見ずなんだろう。純粋なんだろう。すでに鑑賞したひとにも、これから観るひとにも問いたいよ。この映画は、本当に悲劇ですか。

恋に品なんて必要ないのかもしれなかった。この映画が気味悪いと同時に美しいのは、虚無的な繋がりだとしても、そうなることを選び、望んだのは、ふたりだからなんだと思う。潰れてしまいそうな青さと投げやりな妥協がどんなにすれ違っても、ふたりの身体はこれほどまでに滑らかで、やわらかい。触れたい、重なっていたい、一緒に溺れてしまいたいという気持ちを、罪にだけはしたくないな。間違いなんて数え始めたらきりがないって、わからないから恋だった。

結ばれるという言葉が意味する指の動き、唇の震えは命です。ほんの少し何かがズレてしまうだけで、「欲しい」という気持ちの行き場はなくなってしまうんだな。抑えきれない衝動はあまりにも剥き出しな熱だから、忘れてしまったひとには狂って見えてしまうのかもしれない。かつては皆、あのとろんとしてしまう感覚に夢中だったはずなのに、どうして大人びたくなったり、強がったりしたくなるんだろう。繊細な心は恥ずかしいことじゃないのに。あなたは可愛いから、怖がりなことや我慢できないことを、自信をなくしてしまう理由になんかしないで。

こんなに刹那的な永遠が、悲劇と呼ばれてしまう。でも悲壮感なんてもの、きっとあの男の子は知らないよ。だって、生きてるとか死んでるとかじゃないから。彼が欲しかったのは、想像できないくらいまっすぐでささやかな、どこまでも加速し続ける愛の喜びだった。何でもできるようになる気がするからブレーキが効かないね。動かなくなってもきみは眩しいくらいに白くて、心臓から送り出される血は赤くて、ひとつになって漂う水中は夢のよう。
純