ピッツア橋本

早春のピッツア橋本のレビュー・感想・評価

早春(1970年製作の映画)
4.5
“欲情する浴場。ここが彼らの青春の修羅場なのであった”

70年代。イギリスの大衆浴場で働きはじめた15歳の少年マイクが同僚の悪魔美少女スーザンに恋をし、翻弄される青春ラブストーリー。

オーソドックスそうな話に聞こえるけれど、この大衆浴場(プールと簡易レンタルシャワーを足して割ったような施設)がロケーションとして最高に効いている。

性欲に根差したかなりアナログでダイナミックなアイデアがふんだんに使われているのだが、この浴場がその全ての受け皿になっていてかなりビビッドな演出効果をもたらしている。

キャラクターも一見勢い重視の荒削りなように感じるけれども、自分の10代を振り返ると確かに本作に近しい屈折した感情表現もリアルにあった気がする。
特に童貞は何も知らないくせに潔癖で気難しい。そしてその弱さを意味不明な言動ではぐらかしたりする。

思春期特有の精神と肉体の成長のチグハグさが本作では鮮烈に描かれているのだ。

とにかくスーザンの小悪魔感、手に負えない感じが凄まじい。凄まじく美しくてわがままで脆い。ビッチの一言で片付けるにはあまりに尊くてチャーミングな存在だ。

そこに完全に魅了され狂っていくマイク少年の童貞故のあまりに早過ぎた春を、男性鑑賞者は半分嘲笑し、もう半分は自身に重ね、何故か冷や汗をかく事請け合いだろう。

72年製作という事もあり、イギリスとドイツ合作ではあるがどこかアメリカンニューシネマ的な型にハマらない爆発力を本作は見せつけてくれた。

本編を見終えた後に、改めてこのパッケージを見直すとこの秀逸な変態性に乾杯したくなる。

爆発力ある性的青春映画でした。
ピッツア橋本

ピッツア橋本