継

ナビィの恋の継のレビュー・感想・評価

ナビィの恋(1999年製作の映画)
4.0
ヤマト(本土)から島へ帰って来た奈々子。
船着き場に迎えに来たおじぃとおばぁに再会し、家までの小路を軽トラの荷台に揺られ、風に髪をなびかす。
道すがら同船していた老紳士と青年を一旦追いやるイントロダクションが、穏やかに流れる島の空気と抜ける様な空の青さを存分に伝えて心地良い。

手付かずの自然は美しいけれど、その暮らしには小さなコミュニティ独特の閉塞感があり、
内/外を隔てる窓のない家屋は開放感があるけれど、本家と分家には折り目正しい区別が為されて、相談事を霊的に解決するユタは時に理不尽な弊害をもたらす。
外からは見え難い風習が残る島の暮らしを、映画は主に奈々子の視点で観せていきます。


沢木耕太郎の短編集「チェーン・スモーキング」に与那国島に伝わる本作と似た言い伝えが紹介されていて、最初に観た時はそのバッドエンドを思い出して結末までハラハラしながら見守った記憶が。
引き裂かれた恋心、理不尽な婚姻、報われない愛情。
本作はタイトル通りに恋焦がれるナビィを描きながら、同時に自分の事よりも大好きな人の幸せを第一に考える愛情の尊さを、おじぃの姿を借りて描いていきます。

英語や下ネタ、トボけたユーモアを交えて訥々と喋る。気弱な所があって親戚には頭が上がらないようだけど、ナビィを愛する気持ちは誰よりも強い「おじぃ」。
これは自分が男だからかもしれないけど、こんな愛すべきキャラクターは滅多に出会えるもんじゃなくて魅了されてしまい🎯 以降、完全に肩入れして観ることにww。


“あなたしか見えない/あなたは魅力に満ちている/ドラマチックな恋/秘められた思い/私はあなたを信じます…”、いずれもナビィと老紳士サンラーの強い絆を示すような、ブーゲンビリアの花言葉。
おじぃはきっと花言葉なんか知らなかっただろうけど、サンラーが想いを託した小さな枝葉とそれを慈しむように育て上げたナビィの想いは宙に透かさなくても見えてたはずで。

庭を埋め尽くし燃える様に咲き誇る赤い花、、おじぃは毎日どんな思いで見つめていたのだろう?
言葉少なに気遣いの言葉をかけ、さりげなくその背を押す。寡黙で、不器用な優しさ。
ナビィの想いを誰よりも知り、その幸せを願うから?
でもおじぃ、それで良いのですか?、本当に良いのですか?… (ノ_・、)

ユタが推すケンジではなく、相思相愛の福之助を奈々子とくっつけようとする姿には精一杯の反骨を見る思い。
ランチを奈々子に言い付ける, いつもとは違う朝のやり取り。 “女は、初めての男は忘れないもんだよ..” の台詞…何気ない伏線の回収が胸に沁みる。
だから、
オペラの歌詞に涙し “寄り道” の途中で髪を直して「19歳」に戻ってしまうナビィには、
せめておじぃと暮らした60年の歳月は “寄り道なんかじゃなかった” って、思っていて欲しい。
“婿入り出来てベリーハッピー” と無償の愛を貫いて煙草を燻らすおじぃの姿にそう思わずにはいられない、そんな映画でした。


男性と女性、年齢や恋愛経験によってそれぞれの受け止め方は異なると思いますが、
あらすじから想像するより大らかで風通し良く感じるのは、おじぃを演じた登川誠仁に代表される役者の魅力に加えて、舞台である沖縄・粟国島の空気感による所が大きいのは言うまでもありません。

海を見下ろす高台の草地、焚き火を囲む夜のビーチ、涼しげな風がそよぐ祭りの帰り道ー。
本作を観ると粟国島へも行ってみたくなりますけど、ケンジの船ではイヤかな(笑)
継