そのじつ

ナイル殺人事件のそのじつのレビュー・感想・評価

ナイル殺人事件(1978年製作の映画)
3.5
小学生のころ、よくテレビの映画番組でかかっていたように記憶している。が、見たのは初めて。昨年末これも初めて見た「オリエント急行殺人事件」の筋立ての面白さに唸ったので、見てみた。

紀行映像としても楽しい。スフィンクスの横で乗馬、ピラミッドのてっぺんでラブシーンとか、なんか凄い!としきりに感心してしまった。カルナック神殿・アブシンベル神殿のシークエンスは絵的に素晴らしい。神殿の巨大さと人物の小ささの対比だったり、エッシャーの絵のような不思議な気持ちになる構図で撮られていたり、凝った演出。

女優の豪華さも特筆モノ。ジェーン・バーキン、ミア・ファロー、オリビア・ハッシー。それぞれ違った魅力を放っており、華やか。迫力。
だけど一番興味を持ったのは、マギー・スミス演じる世話係とベティ・デイビス演じる金持ちの老嬢の二人連れだった。
互いに嫌いあっているこの2人、実に親密そうに距離が近いのだが、エスコートのため腕に置かれた手は、邪険にその肘を捻り上げるし、労いの言葉は、最後まで聞くと蔑みに満ちた結びの語で終わっている。
特に上機嫌で従者の女を言葉でいたぶり続ける老婦人の迫力が凄い。
この人物像はアガサ・クリスティのものか?原作で確認したくなった。非常に面白い。

可能性のある人物に片っ端から嫌疑をかけまくるポアロの捜査法がスリリング。終盤の怒涛のミステリ展開も楽しい。
贅沢な映画だった。
そのじつ

そのじつ