Kumonohate

喜劇 男は愛嬌のKumonohateのレビュー・感想・評価

喜劇 男は愛嬌(1970年製作の映画)
3.7
監督森崎東、主演渥美清、ヒロイン倍賞美津子。旅から戻ってくるところに始まり旅に出るところで終わったり、人情度がググッと上がっていたり、主役に昇進した渥美清がスラスラと口上を述べたりと、前作「喜劇 女は度胸」に比べて、これはもう殆ど「男はつらいよ」。相変わらず破壊度は高いが、それも前作に比べるとかなり控えめで、せいぜい“ブラック寅さん”程度。また、「男はつらいよ」には皆無のお色気度が加わっているが、あくまで安全運転の範囲内。

だから、今回は、寅さん基準で見た方が面白いかもしれない。

ただ、一方で、前作に色濃かった、“高度経済成長から置いてけぼりを食らった人々”的な社会背景感は大幅に減衰(まあ、天皇皇后の写真を入れた額が傾いているという描写はあるが)。それ故、ニヒルな笑いやブラック・ユーモアも影を潜め、わりと普通のコメディー作品になっている。また、テーマが「女」から「男」になったから当然とはいえ、倍賞美津子がお色気担当の域を出ていないのは少し残念。

ちなみに、「男はつらいよ」シリーズと公開順に並べてみると、「男はつらいよ」「喜劇 女は度胸」「続・男はつらいよ」「男はつらいよ フーテンの寅」「新・男はつらいよ」「喜劇 男は愛嬌」「男はつらいよ 望郷編」となるらしい。「男はつらいよ」は当初5作目で完結の予定だったことを考えると、それに代わるシリーズとして考えられていたのだろうか?
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