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シリアナのRのレビュー・感想・評価

シリアナ(2005年製作の映画)
4.8
これは超難解!!! 一回見ただけでは内容がほとんどつかめなかった。難しいなぁ、よー分からんなー、面白いのか面白くないのかもよー分からんなー、ってちょっとイライラしながらも、テンポのよい編集と皆さんの素晴らしい意味深な演技に引き込まれ、かなり終盤になってはじめて、あーそういう話なんやぁ、ってなった。で、はじめの方だけもっかい見とこかと思って見始めたら、おおおおおおお!!! めちゃめちゃ面白いではないか! 結局夢中で見終わりました。そのせいで重度の寝不足!笑 この映画、一回で内容掴める人ホント頭いいと思う。羨ましい限り。私の理解力が低すぎるだけかもしれません…が、かなりややこしい映画なのは間違いない。2回目見ると意外とストーリーはシンプルに感じるので、なんでだろと考えますと、登場人物が数多い上、全員裏の思惑ありすぎ。しかも表面上は無表情か余裕の表情なので、何考えてんのか分からへん。で、彼らの裏の思惑がすべてあと出しで分かっていくので、何かが画面で起こってる最中はそのことの真意が分からない。表面上で起こってることも、最初ちょろっと説明があるだけで、いろんなキャラのいろんな動きが次々に重なってくるから、どれが誰で、誰が何に従事してて、誰が誰の側の人間で、ってのが非常に掴みにくい。というめちゃめちゃハードルの高い映画。なのだが、初回鑑賞時の最後に全体的な話のオチが分かって、そこにいかに収束していったかをおさらいするように見直せる2回目で、なにーーーーーーー!!! そういうことだったのか!!! と全てが確認でき、開眼の快感を大いに味わいながら大興奮! なので、できるだね1回で十分に楽しみたい人は、先によくよく話の流れを掴んでから見ることをお勧めしたい。よくよくね。大体のあらすじじゃなくて。細かい人物関係をしっかりおさえた上で見ないと、初回で存分には楽しめないと思われる。全体的なストーリーは、石油の利権を中国や欧州に奪われることなく、絶対的に確保しておきたい米国政府と企業側、そして、米国の支配を抜け出してちゃんとした民主国家として国を建て直したいアラブ系国家の王子側。この二者が様々な人物を介してせめぎ合うプロセスが描かれていくのだが、見ててほんまウンザリしてくるのは、出て来る人物のほとんど全員が、何だかんだ、莫大なり大なり小なり、みんな自分の利益のことしか考えてないという事実。最初は、お、コイツは善人なのかな、と思ってたやつも、例外なく、利己心を包み隠し、裏では自利と保身を追求する。で、悪のシステムがあまりにも巨大化してしまったために、誰もそれを変えることができないし、仮初にも変えようと試みるならば簡単に消されてまう。しかもおこぼれをもらおうと巨悪と結託している小さな悪人たちは、ひとたび巨悪に正義のメスが入り始めると、正義の目を巨悪から逸らすためのデコイとしていとも気安く犠牲にされる。悪の結託であるが故にいつ誰に裏切られるかなんの予測もつかないのだ。まったくすごい。人間の悪とはこうまでどこまでも拡張し得るのか、と戦慄するしかありません。ほんで、そのせいで、朴訥だった庶民がテロリスト化してしまう。彼らはテロリストになりなくてなったわけではない、ならねばならなくなってしまっただけなのだ。何て最悪のサイクル。ってことでテーマとしてはマジでめっっっちゃくちゃ面白い!!! ただ、よくもまぁここまで理解しにくく作ったもんだ。もう少し親切に作ってもよかったんじゃないか? と思わなくもない。が、2回目に見たときすべてに合点がいく際の鼻息フンフンさせるほどの興奮とゾクゾク感は、この作りでないとあり得ないよなー。正直初回は★3つくらい。この感動こそをしっかり味わいたい人は、是非とも4時間しっかりとって、2回連続で見ることをお勧めしたい。僕としては、これは何年かおきに見直したくなりそう。テーマ的にも、映画の構造の面白さ的にも。ものすごく豪華なキャストのなかで、ボクが特に好きだったのは、クリストファープラマー。ちょっとしか出てこないのに印象深すぎる。何なんだ、この人のこの異様な迫力、存在感、エレガンス。こんな役にこんなピッタリな爺さんが他におりますか!
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