近親相姦という際どいテーマに挑んだルイ・マルが、思春期の少年と美しい母親の関係を、ジャズをBGMに明るくお洒落に描く。
主人公は14歳の少年ローラン。裕福な家庭で暮らす三人兄弟の末子。兄の悪ふざけに付き合い、酒や煙草などやりたい放題。食べ物を粗末にする描写が嫌いなので、ホウレン草でテニスする兄弟に「食べ物で遊ぶな」と叱りたくなった。
母親はローランを可愛がり、大人として扱わない。母にベッタリの息子は、若くて美しい母親の中に「女」を見る。
「ただいま」や「お帰り」の抱擁とキスは家族間の挨拶や愛情に見えるが、度が過ぎると息子を溺愛する母と、マザコンの息子に見える。
母の愛が他者へ向けられると嫉妬し、独占欲が増す少年。湯治場で療養する後半で親子の関係は更に深くなる。
「初体験」は大人になるための通過儀礼で、兄の悪戯によってその経験は半分で終わり、療養所で知り合ったエレーヌには拒まれる。
性に目覚めた少年の好奇心は母へ向かう。それは「おやすみ」のキスで始まり、越えてはいけないラインの上で感情が揺れ動く。
生々しい描写はなく、まるで漫画のような美しさで感情の機微が描かれていた。禁じられた快楽に堕ちる泥沼の近親相姦ではなく、その一夜は少年の人生を通過して思い出となる。
そして少年は大人になった。