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燃えつきた地図のmajiziのレビュー・感想・評価

燃えつきた地図(1968年製作の映画)
4.0
勅使河原宏×安部公房の失踪3部作のトリは、勝プロ製作・大映配給のカラー作品。

主役はもちろん勝新太郎。

ここまでくると『砂の女』『他人の顔』と毛色は変わるのかと思いきや、オープニングのサイケデリックな色彩デザインと武満徹の不協和音の激しい音響で相変わらずの世界観。

勝新が演じるのは、失踪した夫を探して欲しいという妻からの依頼に応じる探偵。

しかし調査すればするほど、不可解なことばかり、失踪者の周りはおかしな連中ばかりで全く糸口は見えない。

次第に探偵自身が都会の渦に飲み込まれていく、というストーリー。

妻はあまり心配している素振りも見せず非協力的。
調査先に出没する依頼者の弟はヤクザ者で協力的なのか邪魔したいのか謎の行動ばかり。
失踪者の勤め先の部下も嘘をついたり、秘密を打ち明けると言いつつ、くだらないネタしかもってこない。

都会における関係性の希薄さや距離感の見えない繋がりが、生きている社会への不安や孤独を炙り出すという状態。

夢か現実かわからなくなる表現で、真昼のビルに映し出される巨大な依頼人(市原悦子)の映像は『ブレードランナー』の強力わかもとの芸者以上にSF。

このセンスが無意識の自己喪失というテーマに合致しているのかはよくわからないけれど、いろんな意味でインパクトはあると感じます。

印象的だったのは、失踪者の部下役を演じた渥美清。
寅さんのオーラを消した演技が見事でした。
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