櫻イミト

男性と女性の櫻イミトのレビュー・感想・評価

男性と女性(1919年製作の映画)
4.0
淀川長治さんの伝記ドラマで少年時代の思い出の映画として大きく取り上げられた一本。「サンセット大通り」(1950)のグロリア・スワンソン主演デビュー作(当時20歳)で、彼女を抜擢したのはデミル監督。同作では二人で共演し本作の頃を振り返っている。

ある貴族の一家が執事と女中を連れて自前の豪華船でバカンスに出かける。ところがハリケーンで難破し無人島に漂着する。サバイバル生活の中、人間力のある執事が徐々に頭角を現し立場が逆転。わがままだった貴族の娘とも恋仲になっていくが。。。

1919年(大正8年)の頃に本作を観た淀川少年の興奮がうかがい知れる。立場逆転のストーリーと冒険ものを組み合わせた上出来のエンターテイメントだった。船の難破シーンには手が込められ、中途で挿入されるバビロン王国のエピソードも豪華なセットと衣装で楽しませてくれる。時代を超越する演出は、デミル監督の初期代表作「十誡」(1923)でも用いられていて、本作は先駆けとなっている。

そしてグロリア・スワンソン。バビロンパートでは孔雀の冠姿で登場し、服従を拒否して自らライオンの檻に入っていく、その高貴な女王っぷり!傑作「サンセット大通り」をさらに楽しむためには、引用されている「クィーン・ケリー」(1929)と共に本作の鑑賞もマストと言える。

予定調和を回避したラストも様々な示唆が込められていて好みだった。ハッピーエンド好きの人には不満かもしれないが、これが大人の鑑賞に耐える映画というものだと思う。

デミル監督の隠れた傑作エンターテイメント。
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