ヨツ

ワンダフルライフのヨツのレビュー・感想・評価

ワンダフルライフ(1999年製作の映画)
3.4
是枝監督作品鑑賞2作目〜
私にはあんまりしっくりこなかった作品だった。好みの問題だと思います。

ドキュメンタリータッチがすごく巧くて、あたかも本当にこんな仕事が存在しているかのよう。その分、幻想的な設定やストーリー自体のロマンチックさとうまく馴染んでない感じがした。ドキュメンタリータッチで生み出されるリアリティに対応するほどのキャラクターの深みがそれぞれに感じられなかったというのもあるかな。

設定や筋書きも素敵だと思うんですが、個人的には残酷だという思いが出てきてしまう。何年生きても1つだけしか持っていけないし、その記憶が子供の頃や青春時代の思い出なら、そこから先その人が生きた年月は記憶から失われるということなんだろうし、そういう風に切り捨てられた記憶の存在が虚しい。作中でも1番輝かしい記憶は晩年にはなく若い頃にあることが多く、また、それは仮に現実でアンケートしてもそうなのだろうな、と思うのでやるせなさを感じた。また自分が選んだ記憶のなかに登場する人物が自分との思い出を選んでいないことが十分に起こり得るのも、完全に現実を映していてこわい。誰かにとっての一番が、その誰かの相手の一番であるとは限らない。当然だし、わかりきっているからこそ、残酷な現実。
是枝監督が観客にこういう残酷さを受け取って欲しかったのかというとそうではない気がするので、自分には合わなかった作品だな、としみじみ。
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