第二次世界大戦時の1942年、日本のアメリカ本土への砲撃に対する報復として行われた初めての日本本土空爆作戦「ドーリットル空襲」を、実際に参加した中尉の手記をもとに映画化。監督マービン・ルロイ。脚本ダルトン・トランボ。1944年公開。
新婚のローソン中尉(ヴァン・ジョンソン)は秘密作戦に志願した。ドーリットル中佐(スペンサー・トレイシー)は集まった面々に作戦の全貌を明かす。それはB-25爆撃機を空母に搭載し日本近海より発艦、東京を空襲するという未だかつて無いものであった。。。
戦時中の作品に関わらず映像シナリオ共に完成度が高い。母艦から飛び立つ軍機の臨場感。特に海から低空飛行で日本に上陸し東京を爆撃する一連の主観ショットは非常に巧く撮られていて、当時日本の円谷特撮よりはるかに優れているように見えた。
トランボの脚本からはアメリカの余裕のようなものが感じられた。ヴァン・ジョンソンとロバート・ミッチャムが演ずる兵隊の作戦前夜の会話―「むかし家に日本人の庭師がいた。いい人だった」「日本人は嫌いじゃない。好きでも嫌いでもない。それでもこの作戦に参加している」「誰も憎んではいない。それなのに突然大都市に爆弾を落とす。爆弾を落とすか落とされるかの問題だ」。そしてスペンサー・トレイシー演ずる隊長は「爆撃の目標は軍事施設に限るが、働いている一般市民を殺すことも避けられない。もし道徳的観念にとらわれて自分を責めるようならば行くな」と述べる。
戦争真っ只中の製作であり少なからず現場のメンタリティーは反映されていると思われる。時期的には戦意高揚映画に位置づけられるはずだが、兵隊たちは口々に戦争が終わって家族と過ごすことを望み、新婚の主役に至っては作戦で負傷した足を切断する地獄の苦しみに苛まれ命からがら新妻の元へ帰る。なんだか反戦映画を観ているような気分になった。
この作戦の先に東京大空襲と原爆投下がある。現場は実行するしかなく、戦争状態とはそういうものなのだ。戦争は決して遠い昔のことではない。昨日はシリアのイラン大使館にイスラエル軍が空爆した。先ほどイランのライシ大統領は報復すると表明した。