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オリバー!のWILDatHEARTのレビュー・感想・評価

オリバー!(1968年製作の映画)
4.0
『古典劇では悪役こそ本当の主役』


フェイギン役のロン・ムーディに全部持っていかれてしまった!
表情、身のこなし、歌声、ダンス・・・どれをとっても魅力的で、憎めないケチな悪党を見事に演じきって鮮烈な印象を残している。

こうした古典的な市井の人々の物語においては、時代に翻弄されながらも逞しく生き延びる下層階級民が往々にして重要な役割を担っており、えてして模範的な人物よりも悪役の方がキャラクターが立ってしまうものだ。

何しろオリバーのような、他人の同情を誘う程の美しい容姿に恵まれていないのだから、汚い商売に手を染めてでも世知辛い世の中をサバイヴするしかないのである。

もう一人の強烈な悪役であり、何でもありの猛獣のようなビル・サイクス(オリヴァー・リード)に対してフェイギンには悪党なりの美学があり、比較上どうしてもフェイギンの方に肩入れしてしまう。

という訳で、最後にようやく更生するかに見えたフェイギンが再びドジャーと組んで全身に陽を浴びながら意気揚々と泥棒稼業に戻ってゆくダンスシーンには、思わず拍手喝采を贈ってしまった。

「がんばれ!生きろ!」と。
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