むさじー

JSAのむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

JSA(2000年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

<敵対兵士に通う友情、そして悲運>

南北朝鮮の国境にあるJSA(共同警備区域)の北の詰所で起きた兵士射殺事件。事件の背景には敵対関係を超えた兵士の秘かな交流があった。
北は南のテロだと言い、南は北に拉致されたからと言う。
両軍当事者の証言が食い違う“藪の中”の展開で、少しずつ真相が明らかになるが、明らかにすることで新たな悲劇が生まれる。
捜査が入ると、南の一人は真実の発覚を恐れて自殺し、残る一人は曖昧だった記憶から自分の犯した罪の大きさに気づき死を選ぶ。共に切なすぎる。
捜査に当たる韓国系女性将校に上官が説いた。「双方が望むのはこの事件が曖昧になること。事実を隠してこそ平和が保たれる」と。
その忠告に背き、不用意な一言で兵士を死に追いやる女性将校を描くことで、この映画はメッセージをより強くする。
彼女の父親は北朝鮮軍元将校で、韓国軍の捕虜収容所で朝鮮戦争の終了を迎え、捕虜が解放され帰還先を選ぶ際には、北への帰還も南への投降も望まずアルゼンチンに渡ったという。
同胞が闘うことへのやりきれなさと絶望。
彼女は父の苦悩に思いを馳せた。
でもやはり理解できない。
敵対する同胞の心根が知りたくて、踏み込み過ぎてしまったのではないか、と思った。
統一は無理だろうが戦争は避けたい、この微妙な関係はいつまで続くのか。
むさじー

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