あきらむ

ファニーとアレクサンデルのあきらむのレビュー・感想・評価

ファニーとアレクサンデル(1982年製作の映画)
4.4
基本的に外の景色が映らないのもあって、時間の感覚が麻痺する。経験の密度の差で子供の時間は長く大人の時間は短く感じると言われている。濃い蜂蜜のような時間体験を感じさせるこの映画の力は凄まじい。

5時間越えの映画と聞き、不安のなか鑑賞開始。世界観に慣れてきた後半の面白さに心躍る。
後半は幻想と恐怖の中で、子どもの目線から大人の冷酷さや面白さを丁寧に描いている。前半第一章のクリスマスパーティーは今まで見たどんなパーティーより素晴らしい。

アレクサンドルは無表情であまり喋らず、好奇心旺盛だが臆病という人物描写で、無理にはしゃがないあたりに子どもらしさを感じてすぐに好きになった。子どもは表情を作らない。大人は無意識に表情を作ってしまう。たくさんのテーマが隠された作品だがペルソナも重要なテーマの一つだ。
アレクサンドルの表情の変化が緻密に撮られていて、痛々しい場面すら透明感がある。

劇場家業の名家、厳格で質素な司教の家、金持ちの道楽屋敷と舞台が変化していくけど、各家の雰囲気がとてもそれらしく、今まで観たことのない世界を経験。
特に道楽屋敷は、子供心をくすぐる。埃っぽくて世界中の骨董品と言う名のガラクタが詰まっていて、親戚に一人はいる変なおじさんが住んでいて……最高。現実世界とアレクサンドルの脳内との世界が交差する場面が幻想的で少し恐怖。童心に返ったような、不思議な気持ちになれた。