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ファニーとアレクサンデルのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

ファニーとアレクサンデル(1982年製作の映画)
4.0
【ホラー映画のスペシャリスト:イングマール・ベルイマン】
※本レビューはnote創作大賞2025提出記事の素描です。
【上映時間3時間以上】超長尺映画100本を代わりに観る《第0章:まえがき》▼
https://note.com/chebunbun/n/n8b8d6963ec5a

イングマール・ベルイマンはアート映画の巨匠のイメージが強いのだが、ホラー映画の巨匠でもある。実際にウェス・クレイヴン監督が『処女の泉』をベースとし『鮮血の美学』を制作したことからも明らかであり、ホラー映画にも影響を与えている。彼の撮る恐怖はハリウッドとも日本とも異なる質感があり、『ファニーとアレクサンデル』はそれを紐解く手掛かりになるであろう。

少年が部屋の片隅で眼差しを向ける。するとガタガタと空間が揺れ始める。彫刻は動き始め手招く。別の場面では、空間を隔てる仕切りの奥から絶叫が響き渡る中、子どもたちが静かにその叫びの方へと向かっていく。至近距離で罵声を浴びせられるショットが唐突に飛び込む。イングマール・ベルイマンは心理的不安のイメージを唐突に挿入することで、深層心理に広がる不安をホラーとして演出していることがわかる。

『ファニーとアレクサンデル』はカラーになったことで怖さがパワーアップしている。たとえば、火だるまになる人のイメージがフィルムの粗い質感で提示される場面があるのだが、これは『仮面/ペルソナ』におけるティック・クアン・ドックの焼身自殺映像を挿入することによる心理的不安を発展させたような痕跡がある。また、章の区切りには真っ赤な背景の中でエンドロールが流されるのだが、この区切りが訪れる瞬間が突然であるがために、脳天を殴られたかのような怖さを抱く。通常、ホラー映画における恐怖は仄暗い空間で発生するのだが、ベルイマンの場合、鮮やかな色彩の中で恐怖を浮かび上がらせており、ホラー映画界における独特な立ち位置を確保しているのである。
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