巨匠イングマル・ベルイマン最後の劇場用作品にして映画史全体で見ても最大級の傑作。
以前見たのがビデオ版の半分程度短縮されたもので、DVDで完全版を見たのは今回初めてだったけど、やはり5時間という長尺でもベルイマンの作品は完全に味わえなければいけないなと思った。
まるで映画を三つくらい合体させたような作品で、序盤のパーティの夜までを描いた90分だけで一つの作品として成立するほどだが(実際そこで一回スタッフロールが挿入されている)、つまり一作品で三つ分程度の楽しめるということで、まさにベルイマンファンなら最高の作品となっている。
そしてこの集大成的作品で演劇一家の悲喜劇というテーマを選んだ点も、映画と共に舞台にも取り組んできたベルイマンらしいところがあり、残念ながらベルイマンの舞台はよくわからないが劇中劇を見ていたらこんなだったのかもしれないと想像できて興味深かった。
赤や灯りが際立った美術や撮影も最高級のもので、その絢爛さと優美さを味わっているだけで5時間強があっという間に過ぎ去ってしまうくらいだ。
ハムレットをモチーフにした展開も味わい深く、特に父親の亡霊の物哀しさは何とも言えないものがあった。
でもやはり一番印象に残るのは終盤に出てくる人形屋敷で、あの巨大人形を含めた不気味な人形の数々は強烈な印象を残すものとなった。
この最高の芸術映画を眼前にするとき、その美しさに打ち震える思いがしたけど、これこそ映画で味わえる最高級の喜びなのだろう。