さわだにわか

ファニーとアレクサンデルのさわだにわかのレビュー・感想・評価

ファニーとアレクサンデル(1982年製作の映画)
4.0
『狼の時刻』のDVDに入ってるドキュメンタリーで評論家かなんかが「『狼の時刻』はベルイマン唯一のホラー映画で…」とか言っていたので完全に油断していたが嘘つけこれもホラーじゃないか!主に第四部と五部ですけど『シャイニング』みたいだったぞ!騙された!ありがとう!

お化け描写も怖くてよかったがひとでなし主教のひとでなしっぷりもポイントが高かった。全然そんな映画とは思わなかったが『狩人の夜』とか『ブリムストーン』のお仲間だったのか。凶悪な聖職者が出てくる映画は、イイ。
しかもその住処ときたら横溝正史テイストの閉鎖的でグロテスクな怪奇ハウスなんだから文句なしだ。拷問的虐待を横目に編み物をする母と姉、とくに伯母さんの存在感は強烈であった(でもあの人は一番可哀相だった…)

なんせ5時間超も時間使ってるので大家族ドラマの枠内にホラー、サスペンス、コメディ、ユダヤ神秘主義、舞台劇、魔術と幽霊、世俗と信仰、快楽主義と正義の相克、時代の移り変わりと名家の没落、と雑多に詰め込む。子供目線の映画かと思ったが視点移動も好き勝手にやる。これは飽きない。
屋根裏部屋で主人公の少年アレクサンデルくんに泥水を吐きかける幽霊(これが怖い)は『シックスセンス』の有名な嘔吐幽霊を撮るにあたって参照されたものかもしれないなぁ。色んな楽しみ方のできる懐の深い映画でした。
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