一八

マチネー/土曜の午後はキッスで始まるの一八のレビュー・感想・評価

4.9
※レビューの最後にお知らせがあります。

映画は何処まで進歩したとしても所詮は作りものだ。
名高い映画監督が大金を掛けて素晴らしい作品を作り、人々が最高の映画体験をしたとしても、それが現実の社会に直接影響を与えるわけではない。
ただ映画の中には、観客によりスリルを味あわせるために、リアルを追求する力が備わっている。
その力は時に、現代社会が覆い隠すものすらも映し出してしまうのだ。

『グレムリン』を手掛けたジョーダンテ監督の傑作コメディ映画。
ノスタルジックな世界観が堪らない大好きな逸品。

"1962年のフロリダ。B級怪奇映画を手がける映画監督のウルージーは、新作モンスター映画のプレミア上映を行うためにキーウエストの町に訪れ、準備を進めていく。
映画館に通う子供達がウルージーが来たことにはしゃぐ中、世界ではソ連がキューバにミサイル基地を建設し配備したことを理由に、海上封鎖が行われるキューバ危機が発生。
世界と映画館がはちゃめちゃになる中で、果たしてプレミア上映会は無事に成功するのだろうか"

映画館をテーマパークに変え、それを誇りにした男、"ギミックの帝王"ウィリアムキャッスルをモデルにした物語。
50〜60年代に活躍したウィリアムキャッスルの作品は、劇中でモンスターが登場すると実際にモンスターが飛び出してくるなどなど、キャラクターや演出がスクリーンから飛び出してイタズラを仕掛けてくる、今でいう遊園地の3Dアトラクションや4DXの先駆け的な方法が特徴で、それまでになかったリアルなスリルを体験させる画期的なやり方で観客を震えあがらせた。
本作は楽しさ全開のコメディでありながらも、ウィリアムキャッスルなどのインディペンデント系列の映画監督のスタイルを通して、映画のあり方を問う作品であり、同時に映画の向き合い方について深く考えさせられる。

ジョーダンテはシネマに対する愛情を映画の中に人一倍盛り込ませる一方で、映画は作りものであることも強く理解していた。
だからこそ、同じテーマと演出の繰り返しで作品を消耗品に変えてしまった大手の映画会社や大人達、そして映画に引き篭もる子供に対して何かを学ばせ、作りものの世界から現実の世界へ放り投げ出すイタズラを何度も行った。
最後の現実すらも超えるイタズラで、子供達を映画館から避難させ、映写機を落とすウルージーの姿を見ると、発破をかけられたかのような得体の知れない感情が込み上がってくる。
映画好きなら観てほしい、最高の作品だ。

【お知らせ】
えーと、このアカウントを初めてから今で4年以上経ちますが、この度8/12にアカウント名を変えようかなと思います。
理由としましては、某SNSを運営するあの人のせいで"X"という文字が嫌いになったからです。
このアカウント名の『ギズモX』はジョーダンテ監督の『スモールソルジャーズ』のある一コマから取っていて、個人的に気に入っていたのですが、名前にXを使うことで、自分もあの人と同じ思想を持っているのではないかと勘違いされる可能性が出てきた。
新しいアカウント名は僕が以前使っていた『一八』にしようと思います。
以後お見知り置きを。
一八

一八