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コララインとボタンの魔女のRenのレビュー・感想・評価

コララインとボタンの魔女(2009年製作の映画)
4.5
初見時、超偏愛映画として自分の中に大事にしまっておきたい映画に久しぶりに出会った感覚になれた。自分にとっての超絶大傑作。アニメに欲する要素がほぼ全部入ってる。

『ふしぎの国のアリス』や『パンズ・ラビリンス』の系譜である、ダークファンタジー×主人公の内面変化の物語として非常にハイクオリティ。それでいて、『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』や『ジャイアント・ピーチ』の頃のエッセンスも余裕で残っている。
かつ初期ディズニーアニメーションのような良いトラウマ感、『モンスター・ハウス』『家をめぐる3つの物語』に通ずる「"家" の怖さ」も感じられ、それらが実存しているような質感で迫る(不)快感がある。因みに『家をめぐる ~』は昨年の個人的ベスト10の一作。

たった一軒のアパートメント周辺に終始した話なのに世界観はどんどん広がっていく。サーカスや舞台といったモチーフが子ども目線でのワクワク感やエレガントさやゾワゾワ落ち着かない感覚を刺激しつつ、観客を現実と虚構の狭間にみるみる引き摺り込んでいく。

向こうの世界の住人は目をボタンにされるらしい。映像作品において重要な目の演技を封じられたキャラクターたちが怖く見えるのは当然で、そこに「目をとられる」「身体に針を刺されて縫われる」皮膚感覚が無意識のうちに足されるので常に落ち着かなさが付き纏う。

愛したい/愛されたい欲求が肥大化し歪んだ結果の支配。某キャラクターが笑顔の形で口を縫われたシーンが最もゾッとした。相手に理想を押し付けるグロさの象徴がこのような整形だ。
暴力的な押し付けの愛を経て、現実の愛に気づきそれを大切にしようとする繋がりもシンプルでかつ納得できる。結局家族主義なのだけど、そういう話なので特に気にならなかった。
アリスが白うさぎを追うようにコララインがネズミを追って見つけた、あの母性的なナニカに支配された世界へ続く不思議なトンネルは産道の象徴だろうか。

そして吹替のコラライン役の榮倉奈々が最高。あの声色と、コララインの思春期・反抗期の丁度良い憎たらしさ・可愛さ・勇敢さがベストマッチ。黒猫役の劇団ひとりも素晴らしい。多才すぎて何も言えない。

その他、
○ 物語が本当に根本から解決したのかどうか?が分からないざわつきが良い。でも現実はコラライン自身が確かに変えたという前向きなラスト。
○ ストップモーションとは思えない表情の豊かさ。アクションの豊富さ。気の遠くなる努力の果て。
○ 今作でもCG処理されている部分はあるだろうけど、『KUBO ~』を観たときの「じゃあもうCGでいいじゃん」な気分には不思議とならなかった。ぬるぬる動くけど実際に触れそうなモノっぽさが残ってる。
○ ストップモーションだからメイキングが(下手したら本編より)面白いんだろうな〜。
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