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おっぱいバレーのkasmiのレビュー・感想・評価

おっぱいバレー(2008年製作の映画)
2.0
スタンドバイミー的な感じの「青春」なのだが、その「青春」がスタンドバイミーでは仲間内での逃避行という自立とはみ出しの中に成立するのに対して、この作品では部活という集団行動を経て学校社会に組み込まれてゆく中に描かれる。ここに最大の日本社会の特徴、面白さ、醜悪さの全てが滲んでいると感じ、興味深かった。

そして最大の特徴は時代感を意識した「あざとく」ノスタルジーな選曲。これで郷愁に浸れる人はいっぱいいるのではないか。

男の子たちが中学生にしてはものすごく幼く見える、今の小学3年生と同じくらいの見た目と精神年齢なのではないか。だからバカバカしくてかわいいね、という感じにギリギリ見れていた。男の子たち一人ひとりのキャラが全然立っていなかったのも特徴的。ひとりだけ、地味だけどものすごく顔芸の上手い子がいて毎回笑えた。

あの一年生の男の子や怖かった先輩と「おっぱい」を共通項に信頼を深めていく描写なんかは「あーーハイハイ下ネタでホモソーシャルの絆を深めようとするやつーー」と思って最悪だった。

綾瀬はるか演じるみかこ先生は、セクハラなどと言わずにうまくみんなを転がしながらも彼らのことを決して拒まず、適度に恥じらい、みんなをやる気にさせる。彼らの無礼を「あらあら」って許すことを求められているし、そのようにしながら彼らを成長させることを期待されている。
これはどういうことかと言うと、綾瀬はるかは「いい先生」である以前に「いい女」をやっているのだ。「いい女性教師」は「いい母」であることとほとんど同義だ。それって、綾瀬はるかの「恩師」像とえらい違いじゃないのか。

これは、この映画に対する批判ではない。この映画で描かれていることは限りなく真実の空気感だからだ。批判の矛先は、その時代感をいまだに引きずって若い世代の女や男に押し付けようとしている、現実のおじさんたちである。
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