Melko

砂の器のMelkoのレビュー・感想・評価

砂の器(1974年製作の映画)
3.8
今日は、昨日に引き続き邦画が見たい気分。
前々から気になってたこの作品を、満を辞して。原作未読。

長い。でも引き込まれてしまって2時間20分があっとゆうまだった。
日付を言う場面が何度も出てくるせいで時系列が頭の中でごちゃごちゃになり、なんなら何回か巻き戻した。笑

前半ののんびり展開がちょっとだけ残念ではあったけど、後半の重厚すぎる雰囲気が締めてくれる。
足で稼ぐ泥臭いのんびり捜査なのに何故かキーワードや手がかりに運良く何度も遭遇しサクサク捜査が進むのはご愛嬌

親と子の宿命
切なく悲しすぎる、父と息子の物語
いわゆるライ病により、迫害される父親
そんな彼と共に旅をする幼い息子
息子の眼差しは鋭く、物心ついた時から他人から敵意しか向けられてこなかった故か、父親以外には決して心を開かず警戒心を解かない
壮絶な旅路、心無い人からの酷い仕打ち、それでも親子は身を寄せ合いながら、どこへともなく歩き続ける
絶望の旅路、一筋の光、人の恩

父親との涙の別れ、面倒を見てくれた人からの脱走
どちらも泣いていて、自分を大事にしてくれるひとのことはちゃんとわかっていたはずなのに。

戸籍を偽り名前を変え、別人として生きていく
思い出は記憶の中に
辛く惨めな日々には二度と戻りたくなかったのかもしれない
たとえ、愛する人と一緒だったとしても

あの日、永遠の別れをしたはずだから

何十年会わなくても、顔を見ただけでそうと分かる父と
生きているか死んでいるか分からない父を曲の中に見出す息子
その絆は、数ヶ月捜査をして足取りを追った刑事や、2時間半映画を見ただけの私達には分からない

記憶と共に存在を葬る 前に進むために
認めながら否定する 我が子のために

胸を打つ場面が所々ありつつ、残念なところも気になってしまった
いくらなんでも捜査がトントン拍子に進みすぎ
肝心の「宿命」が重たすぎて個人的には合わず…最後のタメなんてしつこいとすら感じてしまった
ピアノを弾く加藤剛の背格好と手のアップが、およそ同一人物には思えない感じでちょっとしらけた…加藤剛があんな肉付きのいいムチっとした手のハズが…
あと加藤剛の指揮の振り方が、曲のテンポと合ってないところが散見されるのも気が散った
ライ病のことについても、もう少し掘り下げてほしいと言うか、もっと丁寧に描いて欲しかった気はする
更に言うと、誰もが認める善人役の緒方拳が、顔立ちと過去作の印象で、全然良い人に見えず…笑(「復讐するは我にあり」の印象が強すぎて笑)

くたびれ気味の丹波哲郎が、シャキッとしながら後半語るところは良かった
そんなに長くないシーンなのに、しっかり印象残しますな、渥美清
幼少期の英良役の子役も、眼差しが印象的で良かった
あとはもう、父親役の加藤嘉。切ない目をしますなぁ、この人…

後半50分ほどの壮絶で重厚な足跡を辿る映像は良かった
また、そこに入るタイミングと画も完璧
そしてラスト、振り返りの旅路
ありし日の、美しい日本の風景 自然は雄大
雪の日も桜の日も紅葉の日も、歩き続けた道のり
Melko

Melko