このレビューはネタバレを含みます
たった一つの手がかりから、足で稼ぐ地道な捜査。事件の発生から解決までの一挙一動をここまでこと細かに描いた作品も、そうないだろう。
ただ、いくら丁寧に描こうと、謎解きそれ自体に納得いくかは別の話。
そう、まず言いたいのは、
「細切れTシャツ、車窓から捨てないほうがいいっしょ~~」ってこと。
そんなことしなくたって、返り血シャツ処理する方法なんか他にいくらでもあったはず。インスタ映えしそうなのはわかるけどさぁ。
結果、人智を超えた勘の良さを持つ若手刑事に勘づかれてしまったわけだし。正直あれは勘というか、もはや超能力の域ではあったけれども。
ただ、そんなことより問題なのは犯人の生い立ち編での一コマ。
そこそこ現代だというのに、竹笠をかぶり、ボロ布に身を包むハイパー貧乏な親子。差別で村を追われ、家もなく放浪生活を送っており、雨に打たれようと、からかわれて石を投げつけられようと、強く生き抜いてきた。
そんな絆で結ばれた親子が、ついに引き離されてしまうことにーーー。
最後の時と知りながらも、二度と離さまいときつく抱き合う父子。それを見つめる巡査も涙をこらえるのだった。
そんななか、人目もはばからず大泣きする父をアップで写した、そのときに、見えてしまった。
……いやいやいや、おっさん銀歯やん!
ええぇ、あんなに貧乏な生活のウラで、、銀歯て!
今日の食事にさえ困っているにも関わらず歯の治療をしていたという何とも言えないコントラディクション。「保険証」や「待合室」といった歯医者要素とあまりにも不釣り合いな「竹笠」「ボロ布服」。しかも見える範囲だけで銀歯3本はあったし(光の塩梅でそう見えるだけ? そうであってほしい)。
キャラ的にも歯抜けオヤジの方がしっくりくるし、治療費あるなら子どもを学校に行かしてやってくれ。
そんなことを考えていたからか、ここまで壮大スペクタクルな回想を見せられたところで、殺人の動機はビミョーに分からずじまいのまま終わったのである。
にしても壮大だったなぁ〜。ケチつけといてなんだけど、めちゃくちゃ記憶に残りそうな作品です。