ホイットモア大統領

砂の器のホイットモア大統領のレビュー・感想・評価

砂の器(1974年製作の映画)
4.6
2019/9/23 MOVIX利府にて午前十時の映画祭10で鑑賞。

「事実は小説より奇なり」

いや、元々は松本清張原作の小説なんですけどね!でも、役者陣の素晴らしい演技と、当時の “臭い” を感じさせる情景・演出が、2人+1人の男の半生を追体験するドキュメンタリーを見ているような錯覚に陥らせてくれる。特に冷房の効いてない列車とタバコ、ハンセン病による差別、田舎と東京の対比に昭和の日本を感じます。

そして、その演技や演出が極まるのがクライマックス。交互に映し出される父子の遍路旅とコンサート・シーンに、組曲「宿命」の音のみで構成される映像は、日本人の感性だからこそ描けた、邦画の究極の表現方法じゃないでしょうか!!(迫真)

あえてセリフを廃することで我々は目と耳をフル活用し、何とか意図を汲み取ろうとします。そうやって作品世界に没入していき、否が応でも2人の境遇に感情移入してしまうのではと思うのです。
しかしそれは、前述の役者の演技と本物の “臭い” があったからこそで、今であれば絶対に再現できないはず。

同様に、丹羽さんが思いやりと人情味溢れるキャラクター、もっと言うと泥臭い日本人だったからこそ辿り着けた真相だったんじゃないかと。そういった意味も含めて、本作は未だに日本人の心に刺さるんだと思います。コンビを組む現千葉県知事のがむしゃら具合も “らしさ” が炸裂していて良い!

さらに本作は、「マイ嗚咽映画」TOP3の内の1本。千代吉の号泣×丹羽さんの落涙は、つられ泣き必至!!

ちなみに残りの2本は、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』と『テラビシアにかける橋』です。我ながら奇妙なラインナップだなあ笑