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ベティ・ペイジのくりふのレビュー・感想・評価

ベティ・ペイジ(2005年製作の映画)
3.0
【エロポップ・アイコンのできるまで】

原作(?)「ザ・リアル・ベティ・ペイジ」を暫く前に読んでいたので、楽しみにしていましたが、全体での満足度はさほど、高くはありませんでした。予想してはいましたが、キレイにまとめ過ぎたかなあと。

ベティさんが表舞台から姿を消してからを、殆ど描いていないんですね。狂信的になったり、精神病院に入れられてしまったり、やばい事件を起こしてしまったり…という、ダウナーな時期には、触れていません。制作・公開当時はご本人存命中だったので、難しかったのでしょうが。

そんなわけでちょっと、生涯を通した伝記映画、とは言いがたいですね。ある人物の、ある面をトリミングしたようなつくり、と言えましょうか。女性監督作品ということもあり、そのデフォルメ具合が、「マリー・アントワネット」に近いとも思いました

50年代の、エロ系ポップ・アイコンに「偶然」なってしまう、どこか無邪気な女性の、プチ半生記ですね。

エロティックなのに、あけすけに弾けてる。不思議な二面性を持つベティさんの、カラフルなフォト・カードを存分に見せつつ、その裏に走り書きされた、彼女のプロフィールを簡潔に紹介する…そんな仕組みをもった映画。

ベティ役、グレッチェン・モルさんがとてもよかったです。ベティ・ペイジという人は、まずはビジュアルイメージが強烈かつユニーク。その役を演じるのはある意味リスキーなはずで、実際、違和感を感じる部分もはっきり、ありますが、オンリーワンな存在である「裸のベティ」をいきなり出さず、その前に「人間ベティ」を演じることで、観客の心をシンクロさせて、その上で一気に脱ぐ!という流れによって、キモチよく騙してもらえました。

生まれたままになる場面は、扇情的という前に、開放感がもの凄くて、ああ、これが今も続くベティ人気の、秘密の一つなんだな、と、スナオに納得してしまいました。

映像はほとんどがモノクロです。それが50年代をはっきりと醸しているようで、懐かしく楽しく、美しかった。そして時々挟まれるカラー映像で、瞬時に目が覚める思いがしましたね。

<2010.2.4記>
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