矛盾は人を強くする。
"人生最悪の日"
当時小学生だったが、ニュースを見て凍りついていた母親の姿を今でも思い出す。
NYの、まさにあの場にいた人々、その家族たちが感じた恐怖は、想像を絶するものだったはず。
本作が描くのは、あの悲劇によって大切なものを失った、「残された者」の人生。
冒頭に言及される「太陽が爆発しても8分間は気づかない」という事実。この8分間をどう生きるか、1人のアスペルガーの少年を通して問いかけてくる。
オスカーの鍵穴探しを「実は」見守っていた母の行動も素晴らしいが、やはりオスカー自身の成長が凄い。
鍵穴探しの旅の中で、いろんな苦しみを抱えながら生きている人々の人生に触れ、悲しむだけじゃない"8分間"の生き方を知る。
罪の告白から父の喪失を乗り越え、前を向いて生きていく決意をするオスカーの姿に感動した。
あの日の父の伝言メッセージにオスカーが囚われていたように、亡くなった者の声は、その口が "閉ざされた" 後も、"騒がしい" ほど心に残る。
なるほどこれは、ものすごく "loud" で、ありえないほど "close" だ。
「矛盾語学者」の父も唸るオスカーのセンスがまた愛おしい。