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この空の花 長岡花火物語のbのレビュー・感想・評価

この空の花 長岡花火物語(2012年製作の映画)
4.6
「前置き」
まずこんなブッ飛んだ作品を、当時73歳だった巨匠大林宣彦が撮ったこと自体が凄まじすぎます!この映画は新進気鋭監督以上のエネルギーに満ち溢れている老獪猛々しい大林演出に狼狽必死の一作です。

「本題」
普通の映画文法をことごとく無視した演出には、開始一分足らずで一筋縄ではいかない予感。
例を挙げると、
登場する度に何故か一輪車に乗ってる女学生、異常に挿入されるテロップ、時代感の不明さ、直接的なセリフによる反戦メッセージ、あまりにも不自然な演技と台詞回し、平気でこっちに向かって話掛けて来たり、時代が何度も行ったり来たりする。
その全ての演出が常軌を逸している。 
特段印象的なシーンを例に挙げると
付き合っていた高嶋政広と松雪泰子の別れのシーン、このシーンはあまりの不自然さに爆笑してしまった。
雨の降る夜、松雪泰子が唐突に「戦争なんて関係ないのに」と言い出し、あまりにも不自然なカツラを被った高嶋が「せっ戦争?」と言う。それ自体は当然の反応なのだが、その後高嶋が「痛いな、この雨痛いな!」なんですかこれ?別れのシーンですよ!意味不明笑
前半1時間弱ほどは「シン・ゴジラ」ばりの圧倒的情報密度とテンポの速さで、前述した異常な演出が繰り出され最早思考が追い付かないどころか、思考停止寸前。
ただ、そこは黒沢映画の観賞スタイル同様、受け流す力と身を任す力を必要とするのかもしれません。しかし、一度乗れたら超絶楽しく、至極の映画体験が待っていることでしょう。


「総評」
不自然な演出の波状攻撃に呆気にとられ未だに釈然としない部分も多いですが、ラストに打ち上げられた花火に込められた平和への願いと祈りに、花火が打ち上がる度に涙腺決壊を禁じ得ませんでした。まさに「大団円」。
映画を愛する一人として、大林監督の映画の力を本気で信じる想いに猛烈に感動しました。
なんだか分からないけど、とんでもないものを観た気がする。その演出に戸惑う方も多いでしょう。しかし、こんな映画他には間違いなくないので観る価値は確実にあります。
あと長岡花火見たくなります。
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