まつこ

この空の花 長岡花火物語のまつこのレビュー・感想・評価

この空の花 長岡花火物語(2012年製作の映画)
5.0
戦争と花火。
失恋と慕情とワンダーランド。
ノスタルジーが全てを包み込む。

人も街も何もかも全てが巡り巡って結びつく。景色が変わり、文明が根付き、笑い声に溢れている今。なのに、だけど、「戦争はまだ終わっていない」。

勝手に終わらせて平和ボケしているのは私だけじゃないはず。「いけない」って言うのは簡単だけど、じゃあどうしたらいいのか、何ができるのか、そんなことを考えながら私もセンチメンタルジャーニーに迷い込んだ。

知らないことっていっぱいあるんだな。長岡に模擬原子爆弾が落ちたことや、焼夷弾がどんなものだったのかということ。奈良や京都もAA級の候補地だったことや、これらが平成になってからわかったことだということも。全然知らなかった。

「戦争で死んだんじゃない。殺されたんだ。」と言う言葉に息がつまる。

何度も何度も涙が溢れた。
久石譲の音楽はレクイエムのようで、花火の儚さと美しさにまた泣かされた。

ああ、いい作品を観た。
160分があっと言う間。ドキュメンタリーだけどファンタジーで、ムワッと蒸れた熱で充満した舞台のような映画だった。

またいい役者さんが揃っているんだよなぁ。なんとなく観てこなかったのだけど、「すごい」もんを観た。観た方がいいとか、この作品だからこそ、そんな押し付けはしたくないけど、色んな人に届くといいなぁと思う。

想像力を働かせて、優しさと勇気をもって、手を取り合う世界を守りたい。じゃあ、どうしたらいいの?って自分に聞いても「ちっぽけな私にできることなんてあるのかなぁ」なんてやっぱり思ってしまうけど、名も無き人の叫びが繋いだバトンを次の世代に渡すことはできるのかな、なんて。

最近じゃ、繰り返してはいけない歴史がこっちを覗いている気がするもんな。気を抜いてはいけない。「まだ戦争には間に合う」よね。

❁余談❁
今の世代に「山下清」は通じるのかな。私はあのドラマが大好きで、毎週祖母と一緒に見るのが楽しみでした。せがんで回顧展に連れてってもらったっけ。一番好きな作品が花火で(「ぼけ」も捨て難い!)、小学校も上がらないウチからそんなのが好きだなんて我ながらマセガキだなぁと思うけど、祖母がもう此処にはいないと思うとなんだか寂しくなりました。
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