あんず

永遠の人のあんずのレビュー・感想・評価

永遠の人(1961年製作の映画)
4.0
古い作品はほとんど観ないのだけれど、フォロワーさんのレビューを読んでとても観たい衝動に駆られたので、Huluに登録して視聴。

フラメンコギターが効果的に使われているとのことだったが、確かに、憎しみの炎のようにも生きることの悲哀のようにも感じさせ、とにかく強烈な印象だった。モノクロの自然豊かな農村の風景と不思議とマッチする。日本語歌詞の旋律は個人的にはない方が画面に集中出来たと思った。ギターと一緒に聴こえてくる楽器なのかステップの音なのか分からないけれど、とにかく馬が走るようなリズムが焦燥感を感じさせ、登場人物たちが走るシーン(本当によく走る)に合っていて、こっちまで不穏な気分になった。

内容は最初から、計画的なレイプの犯行だろって男たちに対して怒りと嫌悪を猛烈に感じたけれど、時代とか立場とかを考えると、もしかして珍しいことでもなかったのかなと。あぁ、悲しい。その件に端を発し、負の連鎖のすごいこと。一番可愛そうなのは愛のない曰く付きの夫婦の子どもたちであることは間違いなく、大人の都合で子どもに不憫な思いをさせては絶対にいけないと声を大にして言いたい。

けれども、この世代よりももっとずっと前から土着の因縁があっただろうことも語られ、結局この今すったもんだしている大人たちも、子どもの時は不憫な思いをし、大人に大切に扱われていなかったんだろうと察する。主要人物3人ともに母親の存在がなかったのも意味があるのだろうか。戦争も暗い影を落としていることには間違いないだろう。だからなのか、私はこういう昔の話を観ると、内容にそこまで戦争が関係していなくとも胸がザワザワしてしまう(松本清張のドラマとか、もろにザワつく)。

初めて高峰秀子を観た。原節子と勘違いしていて、最初はヒロインと気付けなかった。この作品の30年の年月の中で、年齢を追うごとに美しさと色気と凄みが増し、圧倒された。他の作品も観てみたい。原節子や他の昭和を代表する女優の作品も。
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