RYUYA

永遠の人のRYUYAのレビュー・感想・評価

永遠の人(1961年製作の映画)
4.5
その後ろで確実に流れている筈の血を、描かない怖さ。
ほぼゼアウィルビーブラッド。
そのぐらいの憎しみ合いが、この時代の映画で存在していた嬉しさよ。

村の長者の道明寺司的なイタズラな悪男にレイプされ、嫁がされてしまった女。
女には愛した優男がいて、戦争から帰ってきて駆け落ちを誓うが、翌る日、彼は「(金持ちの家で)幸せになってほしい」とイタい優しさを見せ失敗に終わる。優男はそのうち結婚してしまうが、悪男はその嫁をレイプ未遂と、またもやらかす。
数年後、長者の家には子どもたち。長男は自分が、レイプで生まれた子だと知り投身自殺。他の子もまた、駆け落ちやなんやらで家を出て行く。
残されたのは、というか、ずっと残っていた憎しみにケリを着ける日が近づく...

家庭崩壊もいいとこ。
こんな壮絶な章構成はもうない。
黒澤でも溝口でも小津でも無く、満天の喜劇を描ける木下だからできる悲劇の深み。
そして、悲劇の人間たちの後ろには常に美しすぎる山並みや田園が。
こんなに美しい映画は、こんなに酷い映画はもう...

ラストには、不覚にも一点の愛。
それが誰へのものかと感づく瞬間、「これが映画だ」と思った。
RYUYA

RYUYA