ずどこんちょ

フィフス・エレメントのずどこんちょのレビュー・感想・評価

フィフス・エレメント(1997年製作の映画)
3.7
ブルース・ウィリス引退宣言を機に、ずっと見たいと思って見れていなかった本作を鑑賞しました。

「レオン」などのリュック・ベッソン監督作品。主人公のブルース・ウィリスと共にヒロインはミラ・ジョヴォヴィッチ、敵役は監督のその前の作品「レオン」でも悪役を演じていたゲイリー・オールドマンです。
舞台は2263年の近未来。300年前に予言されていた通り、反生命体「ミスター・シャドー」が地球に迫っており滅亡の危機に瀕していました。地球を救うのは友好的な異星人の力であり、その異星人が地球に仕掛けた力を発揮させる鍵を握るのが4つの石と「5番目の要素」です。
予言通り地球を救いに来たところを殺し屋の襲撃を受けてしまったリー・ルーは地球の科学技術で復元され、脱走。タクシー運転手のコーベンと出会って地球を救うために石を探し集めるのです。

当時の空想科学で描く2263年の地球の科学文明を見るだけでもワクワクします。
ベッドや冷凍庫、シャワー室も収納タイプになっている近未来の単身部屋。
武器もハイテクでカッコ良いです。
何より興奮したのは、自分の部屋の窓まで屋台船が来てくれて窓辺でご飯を食べるシステムです。デリバリー型の屋台。コロナ禍でも需要ありそうじゃないですか。
こうした数々の近未来SFを楽しめる一方で、コンピューターはタッチパネルではなくてボタン式だったりして、何かとアナログ感も残っています。
宇宙航空時は睡眠導入装置で強制昏倒させられるとか、人権無視な設定も有り得ないことこの上なく、その絶妙なミスマッチ感がフィクションっぽさ全開のSFとしても楽しめました。漫画やアニメを見ているかのようです。

もう一つ前衛的だったのが、民族的な音楽や美しいオペラなど音楽で映像を見せていたこと。
スモッグの漂ういかにも不衛生でごみごみした街の中でのカーチェイスは、まるで開発途上国の路地裏のような雰囲気を民族的な音楽で醸し出し、リー・ルーが暗殺集団の襲撃を受けて激しいバトルを繰り広げるところではアップテンポのオペラが重なり、華麗な戦闘シーンを盛り上げます。
前衛的と言えば、登場人物たちが宇宙人からハイテンションのラジオMCなど多種多様に渡っているところも、今で言う「多様性」の先駆けのようです。

また、笑いどころがあったのもエンターテイメント作品として良かったです。
ハイテンションMCが騒がしいのはもちろんのこと、殺し屋なら押しちゃうであろうボタンをわざと設計して自爆させる多機能銃とか、ニヤッとさせられる場面がいくつかあります。
敵役のゾーグは冷徹で怖いのですが、まさかのおっちょこちょい設定。斬新です。早くもサクランボで喉を詰まらせて退場してしまうのかとヒヤヒヤしました。
SFのみならず、ユニークなシーンがあるのも飽きずに楽しめるポイントでした。

さて、地球を救う4つの石を意外なところから見つけた一同。水、風、火、土という自然由来の力を経て、あと一つの「5番目の要素」が見つかれば勝てるという状態でした。
果たして、「5番目の要素」とは何なのか。
一方、リー・ルーは時の流れを取り戻すかのように世界の歴史を学んでいた時に、この世界に「WAR」が溢れていたことを知り涙しました。
「世界は破壊の上に創造される」。リー・ルーが救うべき世界の住民は互いに破壊し合っています。果たして本当に救う価値のある存在なのでしょうか。
その答えをコーベンから教わった時、「5番目の要素」が現れました。

世界を救うヒーローとヒロイン。そんな二人の恋愛模様。ありきたりなプロットではありますが、考えさせられるポイントも含んでいたりして満足できる面白さになっています。
世界の歴史を目撃したリー・ルーには、この世界がどう見えていたか。人類が考えなければならない課題は今も世界で実際に繰り広げられています。